25年目のキス

1999/05/07 FOX試写室
名門新聞社の若い記者が、高校生に変装して潜入取材。
ドリュー・バリモア主演のコメディ映画だ。by K. Hattori


 主人公ジョージー・ゲラーは、優秀な成績で大学を卒業した後、名門シカゴ・サン・タイムズ社に就職した。25歳の今では、社内で最年少のコピーエディターとして、社内でも一目置かれる存在だ。本当は記者志望のジョージーだが、上司から内気な性格を見透かされて、仕事は地味な裏方ばかり。ところがそんなジョージーに、社長の鶴の一声で「現代高校生の実体を潜入取材すべし」との厳命が下される。これで記者になれると大喜びするジョージーだったが、一時の興奮が収まってよく考えてみると、彼女には高校時代にロクな思い出がないのだ。彼女は高校時代にイジメられっ子で、ことあるごとに学校中の物笑いの種になっていた。そんな彼女が17歳の高校生に戻って、明るく楽しいキャンパスライフを取材できるものなのだろうか……。

 『世界中がアイ・ラヴ・ユー』で良家の箱入り娘を演じ、『ウェディング・シンガー』では花嫁に憧れる清純なウェイトレスを演じ、『エバー・アフター』ではシンデレラを演じるなど、最近は本人の私生活とは正反対のヒロインを演じることの多いドリュー・バリモアの最新作。今回の役は「25歳なのにキスもしたことがない」という、およそ本人のキャラクターからは想像もつかないもの。ヒロインのジョージーは典型的な「みにくいアヒルの子」で、高校時代は華やかな同級生たちに憧れながら、周囲からさんざんイジメられ続けてきたという設定。回想シーンで登場するジョージーの姿は、おそらくドリュー・バリモアの女優としてのキャリアの中で、もっとも地味で醜いものでしょう。まるで『ロミーとミッシェルの場合』のジャニーン・ガラファロです。

 潜入取材中に周囲から浮きまくってしまったジョージーが、高校時代のイジメられ体験を思い出すくだりは、痛ましくて見てられません。周囲から指さして笑われ、大好きな男の子にもバカにされて、死にたいような気分になってしまったあの頃。この潜入取材は、ジョージーがそんな自分の過去を克服するための試練なのです。やがて彼女は悟ります。広い大人の世界に比べて、高校生たちがいかに狭い世界で暮らし、取るに足らない些細なことで一喜一憂しているかを。ファッションや言葉遣いで自分を誇示し、クラスメイトたちの小さな一言で舞い上がったり深く傷ついたりしているかを。現実の高校生活の中には、新聞の特ダネ記事になるような大事件などありはしない。でもそんなちっぽけな世界は、やはり素晴らしく輝いているのです。

 『エバー・アフター』を観たときに、かなり太っていることが気になったドリュー・バリモアですが、この映画でもかなり太ってます。ファッションも保守的で、よく言えば清潔ですが、おとなしくてダサいとも言える。それが物語の進行に合わせて、だんだん美しく変身して行くのです。メイクや服装による変化でもあるのですが、それよりも、彼女自身の演技力は大したもの。ヒロインの内面的変化を、うまく表現していると思います。

(原題:Never Been Kissed)


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