ヴァイラス

1999/04/22 イマジカ第1試写室
宇宙から来た電磁波エイリアンがロシアの軍艦を乗っ取った!
いかにもB級のノリが楽しいSFホラー映画。by K. Hattori


 宇宙からやって来た未知の生命体が、人類の危機を招くというエイリアン映画。エイリアンが形を持った生物ではなく、高度な知能と意志を持つ電磁波(電波)だという点がユニーク。宇宙空間をクラゲのように漂うエイリアンがロシアの宇宙ステーション「ミール」を襲い、そこから南太平洋上の衛星探査船「ブラディスラブ・ボルコフ号」に乗り移る。エイリアンはコンピュータをハッキングし、工作機械を乗っ取って小型の戦闘ロボットを作ると、あっという間に船内を制圧してしまう。

 全人類的な危機を、周囲から孤立した船の中だけで展開させるのは、同じ東宝東和配給の『グリード』と同じ。もっともこれは、『エイリアン』やなどにも見られるエイリアン映画の黄金律で、例えば『遊星からの物体X』も、周囲から孤立した南極基地が舞台だった。(全人類的な危機を本当に全人類まで広げてしまうと、大げさな見せ物映画『インデペンデンス・デイ』になってしまう。)『ヴァイラス』では、台風に巻き込まれたアメリカの物資運搬船シースター号が「台風の目」の中に逃げ込み、そこでボルコフ号を発見するという、二重の意味で孤立した状況を作り上げている。台風の目の中で嵐を避けられる時間は2時間。しかしボルコフ号を乗っ取ったエイリアンは、錨をぶつけてシースター号を沈めてしまう。シースター号の乗組員たちが生き延びるためには、乗り移ったボルコフ号で近くの港に向かうしかない。しかしエイリアンに乗っ取られたボルコフ号は、船全体がエイリアンと一体になっているのだ。船が港に入った瞬間、エイリアンは情報ネットワークを通じて全世界に広がってしまうだろう。ここにジレンマが生まれる。

 エイリアンは人間以上の科学知識を持っているくせに、案外頭が悪く、それがいかにもB級テイスト。僕がエイリアンなら、船のメインコンピュータに侵入したまま潜伏し、通信施設を秘かに乗っ取って全世界に勢力を広げるか、船が港にはいるのを待って行動を開始します。孤立した船の上で行動を起こすから、人間に気取られて電源を切られてしまうのです。しかもこのエイリアンには学習機能がない。ボルコフ号の乗組員に一度は電源を切られてしまったのだから、次は電源を切られないように大人しくなりを潜めていればいいのに……。このあたりに、何か「今その時にエイリアンが行動しなくてはならない必然性」があると、エイリアン側のタイムリミットと人間側のタイムリミットがぶつかり合って、別のドラマが生み出されたと思う。もっとも、それによって映画が今より面白くなったかどうかは疑問だけど。

 今やすっかり大女優になったジェイミー・リー・カーティスが、『ハロウィン』時代を思い出させるスクリーミング・クイーンを発揮して、天下一品の悲鳴を聞かせるのが嬉しい。大俳優なのにB級も似合うドナルド・サザーランドが、特殊メイクで登場する場面には大笑い。フィル・ティペットの作ったモンスターも、すごい迫力だ。監督は特撮マン出身のジョン・ブルーノ。

(原題:VIRUS)


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