フル・ブラント

1999/04/20 GAGA試写室
チャーリー・シーンとマーチン・シーンが親子役で共演。
悪徳刑事の陰謀を熱血刑事父子が粉砕。by K. Hattori


 チャーリー・シーンとマーチン・シーンが、『ウォール街』以来12年ぶりの父子役共演。でも、見どころがそれだけとはちょっと寂しいぞ。チャーリー・シーンはこの前観た『フリーマネー』で不完全燃焼気味だったので、今回は期待したんだけど……。監督・製作・脚本・原案・作曲・出演と、ひとり6役の活躍をしているのは、ロック・グループ「ポイズン」のリーダーとして活躍しているブレット・マイケルズ。今までに共同監督の経験はあるようですが、今回が実質的な映画監督デビュー作です。主演のチャーリー・シーンは製作総指揮と共同脚本を兼ね、父親マーチン・シーン以外にも、マーチンの弟(つまりチャーリーの叔父)ジョー・エステベスが出演しているなど、身内同士で作ったホームメイド映画なのでした。マイケルズ監督にしても、チャーリー・シーン主演の『フリーマネー』を共同製作しているし、この映画にはマーチン・シーンもゲスト出演しているから、シーン親子とは旧知の間柄というわけ。

 公権力を使って麻薬の密輸と密売をたくらむ悪党たちに、熱血警官父子が戦いを挑む物語。息子の無鉄砲ぶりをいさめながら、実は父親も結構無茶をやるというのが面白い。上司と部下で同じようなパターンの映画は多いけど、それを親子という設定にして、しかも実際の親子俳優を使って演じさせる面白さです。チャーリー・シーンが妻や娘と別居していて、父親のマーチンがそれを心配しているという構図も面白いと思う。ただし、この映画ではこうした人間の二面性、ひとりの人間が職場と家庭の中でそれぞれ違った役割を演じるという部分が、あまりにもアッサリ描かれているように思う。このへんは、例えばマーチン・シーンが警察で見せる厳しい顔と、息子の嫁(義理の娘)や孫の前でメロメロのおじいちゃん顔とを対比させて、ユーモアたっぷりに描くことだってできたはずなんだ。むしろそうすることで、「単独行動は慎め。応援を待ってから行動しろ!」と常日頃から部下を教育している男が、我を忘れて無謀な単独行動に走る様子により説得力が生まれたのではないだろうか。

 かなり長いカーチェイスが映画の終盤に用意されているのだが、これはカットを細かく割った安い作り。『RONIN』のカースタントを観たあとでは、いかにも物足りない。もっとも、予算規模がまったく違うから比較するのが間違っているのかもしれないが……。低予算と言えば、物語の最後に出てくる麻薬精製工場も、ガラスが破れ放題で、とても「建設中」には見えない。どう考えても、あれは工場跡地です。ハリウッドの大作映画なら、廃工場に化粧直しをして建設中の建物に見せるんでしょうが、低予算映画ではとても無理。ガラスを新たに入れ直すだけで、何百万円もかかってしまうもんね。

 『クライング・フリーマン』のマーク・ダカスコがチャーリー・シーンの相棒役で出演しているのだが、あまり目立った活躍はしていなかった。もう少しドラマにからませてやる方が、物語に厚みが出たと思う。

(原題:NO CODE OF CONDUCT)


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