インディアナポリスの夏
青春の傷跡

1999/04/02 映画美学校試写室
朝鮮戦争から帰ったふたりの若者の友情を描いた青春映画。
男は昔も今もセックスについて悩んでいる。by K. Hattori


 『プライベート・ライアン』のアパム伍長役で強い印象を残した、ジェレミー・デイヴィス主演の青春映画。共演は『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』でアカデミー脚本賞を受賞し、『チェイシング・エイミー』や『アルマゲドン』などで日本の映画ファンにもお馴染みの顔になっているベン・アフレック。監督は間もなく監督2作目『隣人は静かに笑う』も公開されるマーク・ペリントンで、本作が劇場映画デビュー作。原作・脚本はダン・ウェイクフィールド。この映画は1997年のサンダンス映画祭で、審査員特別賞を受賞している。

 朝鮮戦争終了直後の1954年。故郷のインディアナポリスに帰る列車の中で、兵役を終えたふたりの若者が出会う。ふたりは高校時代の同級生だが、高校生の頃はろくすっぽ話をしたこともない間柄だ。主人公のソニーは、内向的でおっとりした性格。一方のガナーは、外向的で快活なスポーツマン。ふたりは列車の中で日本酒を酌み交わし、二日酔い気味の青い顔でホームに降り立つ。こうしてふたりの固い友情がスタートした。

 復員兵が軍服姿で家路につく場面からはじまるので、ジェレミー・デイヴィス演じる主人公が『プライベート・ライアン』のアパム伍長のその後に見えてしょうがない。アパム伍長も口ばかり達者で実行の伴わない、いざとなると役に立たないダメ男でしたが、今回のソニー役も似たようなタイプ。この役者には、これで「ダメ男」のレッテルが貼られるぞ。今回もいざとなって文字通り「役に立たない」状態を見せられると、「お前、またかよ!」と思ってしまう。全然関係ない映画なんだけど、困り切ってパニックを起こした表情まで同じで(同じ役者なんだから当然か)、ついつい「アパム、しっかりしてくれよ」と思ってしまった。

 資料では『アイ ウォント ユー』『輝きの海』のレイチェル・ワイズの名前が大きく載っていますが、彼女はどちらかというと脇役の端の方にいる感じ。中心はあくまでも、ソニーとガナーの友情の行方にあります。オープニングタイトルは'50年代の雑誌に登場する、健全なアメリカ生活を描いたイラストが使われていますが、物語はもう少しドロドロしたもの。戦争から帰っても将来の目標は見つからず、何をするでもなく家でブラブラ過ごしている若者たち。高校時代からのガールフレンドと結婚するか、それとも別れて他の女の子を捜すか。地元で就職するか、それとも復員兵向けの優遇制度を使って大学に進学するかが運命の別れ道。家に帰れば親はいつまでも自分たちを子供扱いし、あれこれと世話を焼いてくる。青春期の悩みは、50年前も今も変わらない。

 ガナーの母親の恐るべきユダヤ人への偏見ぶりには、あきれると言うより笑ってしまう。どんなに美人でセクシーでも、中身は無知で無教養な女なのです。ソニーの母が連れてくる作家も、かなりヘンでおかしかった。ガナーの日本びいきは日本人観客にはちょっと嬉しいけど、中身は「日本の娼婦は最高だ!」だからなぁ。複雑。

(原題:GOING ALL THE WAY)


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