マイティ・ジョー

1999/03/12 ブエナビスタ試写室
アフリカで生まれた世界最大のゴリラがハリウッドで大暴れ。
ゴリラの造形と特撮が素晴らしいでき。by K. Hattori


 1949年に作られた『猿人ジョー・ヤング』を、最新の特撮技術を使ってリメイク。密猟者に母を殺された赤ん坊ゴリラのジョーと、密猟者からゴリラを守ろうとして殺された動物学者を母に持つ少女ジルの友情を描いている。この映画の見どころは、身長5メートルの巨大ゴリラに成長したジョーを、この道の大ベテラン、リック・ベイカーがリアルに造形しているところ。ベイカーはカルト映画『キング・コング』のリメイク作品で不本意な仕事を強いられていたので、今回の作品はその雪辱戦になった。物語そのものは単調でご都合主義の目立つものだが、ジョーの巨体がスクリーンせましと大暴れさせただけでも、この映画の価値はあると思う。

 ジャングル育ちの美女ジルを演じているシャーリーズ・セロンは、『トゥー・デイズ』でジェームズ・スペイダーの恋人を演じ、『ディアボロス』でキアヌ・リーブスの妻を演じていた女優です。主役級の映画が日本に紹介されるのは、これがはじめて。アシュレイ・ジャッドを少し若くして、メグ・ライアンの可愛らしさを加えたような、チャーミングな女優さんです。今回の役柄は脚本段階でのエピソードが書き込み不足だということもあり、やや平板な印象になってしまった。ゴリラのジョーが表情たっぷりなのに比べると、ジルは表情が乏しくて「美女と野獣」の一方の当事者としてはバランスが悪いのです。ジルがアフリカからアメリカに渡ろうと決意する過程や、ジョーを動物園から脱走させて以降のエピソードで、もう少し彼女の心を揺さぶってほしかった。この映画ではひとつ危機が訪れると、それとぶつかる前に救済策がお膳立てされてしまい、ハラハラドキドキする余地があまりありません。数々の困難も含め、すべてがすんなりと流れていってしまうのです。

 『シティ・スリッカーズ』や『愛が微笑む時』のロン・アンダーウッド監督作にしては、ドラマ部分に面白みが少ない映画になったのが残念。脚本が『マーキュリー・ライジング』のマーク・ローゼンタールとローレンス・コナーなので、人間ドラマを求めても難しかったかな……。『タイタニック』で海底宝探しをしていたビル・パクストンが、今度は世界を股に掛けて希少動物を探し回る男を演じてます。これは『タイタニック』と役柄が似すぎていて、観る人に「またかよ」という感じを与えることでしょう。「またかよ」と言えば、密猟者を演じたレード・セルベッジアも、いまだに悪役から抜け出せません。うまい役者なんだから、この悪役のキャラクターをもう少しふくらましても面白かったかも。キャスティングに関しては不満も多いのですが、僕のひいき役者デビッド・ペイマーがおいしい役で出演していることで、個人的には少し相殺させてしまいました。

 ジョーがハリウッド中を逃げ回るクライマックスは、『ジュラシック・パーク/ロスト・ワールド』のクライマックスを凌ぐスケール。ここまで盛り上げたのに、最後のオチがやけに甘いのは気になります。

(原題:MIGHTY JOE YOUNG)


ホームページ
ホームページへ