ブレイド

1999/02/25 日本ヘラルド映画試写室
ウェズリー・スナイプスがヴァンパイア・ハンターを演じる。
期待していたんだけど、イマイチ。by K. Hattori


 ウェズリー・スナイプス主演のヴァンパイア・ハンター映画。臨月の母親がヴァンパイアに襲われ、ハーフ・ヴァンパイアとしてこの世に生を受けた主人公ブレイドは、自らの身体に流れる血を呪うように、闇にうごめくヴァンパイアたちを狩り歩く。ブレイドはヴァンパイアと同じ体力と不死身の肉体を持ちながら、ヴァンパイア特有の弱点を持たないスーパーヒーロー。相棒のウィスラーが考案した武器の数々を身に着けて、人間に紛れて生きるヴァンパイアたちをバタバタなぎ倒して行く。ブレイドの宿敵フロストを演じているのは、『ブラッド&ワイン』『バッド・デイズ』の大物食い俳優スティーブン・ドーフ。フロストはヴァンパイア社会では新参者だが、その一方でたぐいまれな野心家。人間との共存共栄をめざす旧来のヴァンパイア社会に満足できず、自ら地上のすべての権力を握るため、伝説の暗黒神マルガを復活させようとしていた。

 すごく力の入った面白い場面と、気抜けした場面の落差が激しい映画です。ダーク・ヒーローものなら『クロウ/飛翔伝説』、ヴァンパイア・ハンターものなら『ヴァンパイア/最期の聖戦』の方が面白いもんね。ただしチャンバラとカンフーを中心にしたアクションシーンの面白さは『ブレイド』の大きな魅力。佐々木小次郎のように背中に長い剣を携え、それを引き抜いてブンブン振り回す場面は時代劇ファンの血が騒ぎます。手裏剣のような武器で、数人の敵を一度に倒す場面も面白かった。ブレイドの部屋には小さな仏壇があったり、出陣前には仏壇に線香をそなえたりと、日本趣味が随所に顔を出す。クライマックスでは宿敵フロストと剣を使った一騎打ちになるというお約束の展開。監督は相当日本のチャンバラ映画を観ているようだ。

 ただし、立ち回りのスタイルが日本風のチャンバラになりきっていないのは残念。日本映画のチャンバラは、静と動のコントラストで見せ場を作って行く。眠狂四郎の円月殺法しかり、座頭市の居合斬りしかり。ゆったりとした動きから、急激に動いて敵を倒し、またゆったりとした動きに戻る。この繰り返しで、アクションシーンのリズムやテンポが作られるわけです。これは大勢を相手にした乱闘でも基本的には同じ。刀を構えてジリジリと間合いを詰め、十分接近してから刀を一閃二閃。時にはつばぜり合いのように、互いの力が拮抗した静止状態が生まれ、そこからパッと飛び下がって再び刀を振るう。『ブレイド』で描かれるブレイドとフロストの対決は、殺陣が西洋チャンバラ。猛スピードで休む間もなく刀を振るい続け、一瞬たりとも動きが止まらない。これはこれで面白いし迫力もあるけど、これだとわざわざ日本刀を持ってきた意味があまり感じられない。

 特撮を使ったヴァンパイア退治の場面は、かなりグロテスク。ぐちゃぐちゃのベトベトで、僕は生理的な不快感を感じてしまった。もっとマンガに徹した方が、はるかに面白い映画になったんじゃないだろうか。

(原題:BLADE)


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