極道の妻たち
赤い殺意

1999/02/19 東映第1試写室
高島礼子を主演に迎えた新シリーズだが、これはつまらん!
どうせなら徹底的に若返りをしてほしい。by K. Hattori


 昨年公開されたシリーズ10作目『極道の妻たち/決着(けじめ)』で完結したはずの東映ドル箱番組が、舌の根も乾かぬ内に装いも新たに復活。結局全開の「完結宣言」は、岩下志麻主演のシリーズが打ち止めということに過ぎなかったのね……。でもこのシリーズ、初期には岩下志麻が出演していないものもあるんです。今回の新作も、どうせ「新シリーズ」を銘打つならスタッフやキャストをすべて入れ替えてイメージ・チェンジをはかればいいのに、主演こそ高島礼子を迎えたものの、脚本が中島貞夫、監督が関本郁夫で、共演がかたせ梨乃では、いつも通りの顔ぶれで何の新鮮味もない。高島礼子も松竹で女博徒もの『陽炎』シリーズに主演していたので、特にフレッシュな感じもしないんだよね。これは完全にビデオ市場を狙ったシリーズ温存。その証拠に、今回は製作に東映本体ではなく、子会社の東映ビデオの名があり、公開劇場も東映傍系になっている。正直言って、すごくつまらない。企画に何の知恵も使っていない、気が抜けて温くなったビールのような映画です。

 やくざ組織の跡目相続を嫌って堅気の道を歩いていた一人息子が、父親の死と組存亡の危機に直面してやくざ渡世に返り咲くというのはパターン通りの展開。しかし、その一人息子を演じているのが、見るからに頼りない野村宏伸というのは新しかった。この導入部だけは、結構期待をそそったんだけどね。大学で経営学を専攻していたインテリ息子が旧態依然としたやくざ組織を立て直し、それをキャリアOLだった妻がサポートしていくという展開になれば、すごく面白い映画になったと思う。でもだめ。息子がやくざになることを決心した途端、話はベタベタの『極妻』路線に逆戻り。頼りなさそうな野村宏伸は案の定、同じ一家の野心家連中に暗殺され、先代が築き上げた組はバラバラになってしまう。

 タガのゆるんだ組を高島礼子がまとめ上げ、最後は彼女が一家の頂点に君臨するのかと思っていたらそうではなかった。この映画は、やくざ組織の内部抗争で夫を殺された高島礼子とかたせ梨乃が、男たちに復讐して終わりなのだ。結局、野村宏伸が堅気の道を捨ててまで守ろうとした組はどうなったのか。高島とかたせは仕事を終えて意気揚々と帰って行くが、そのあとには何も残らないのではないか。「復讐」という目の前の目的に気を取られ、死んでいった先代や二代目の守ろうとしたものは、無惨にもどぶに捨てられてしまうのか。なんという無責任な映画だろう。僕には信じられません。

 そもそも高島礼子はバラエティー番組やワイドショーのインタビューで見せる素の顔こそ魅力的なのですが、演技は常にぎこちなく、表情には華やかさや明るさがありません。どうせこんなお馴染みメンバーでシリーズを再開するなら、素直にかたせ梨乃主演で続けた方がよかったのではないだろうか。この映画では、高島礼子よりかたせ梨乃の方が輝いています。マシンガン抱えて彼女が登場するところなんて、拍手喝采ものです。


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