ギャングシティー

1999/02/16 GAGA試写室
麻薬の売人と間違えて潜入捜査官を殺してしまった刑事ふたり。
二転三転する物語にワクワク。配役も豪華。by K. Hattori


 現職刑事の危険なアルバイト。それは麻薬のディーラーに大量の麻薬を売りつけて代金を受け取ったあと、そのディーラーを射殺して麻薬を回収することだ。売りつける麻薬も殺しに使う拳銃も、鑑識の証拠品保管庫から持ちだしたものだから、いわば「元手いらず」のボロイ商売。殺されるディーラーは善良な市民の生き血を吸うダニみたいな連中だから、何も良心の痛みは感じない。そもそも殺しなんて、同じ町の中で一晩に何件も起こっている。殺されたのがディーラーだとなれば、警察の捜査もどうせおざなりになる。「ギャング同志のいざこざ」「チンピラの物取り」ぐらいでお茶をにごして、それでおしまい。警察はこの手の事件で、犯人を捕まえる気などはじめからないのだ。ところがある日、いつものようにディーラーを射殺したところ、翌朝その相手が麻薬捜査中の潜入捜査官だったことがわかって大騒ぎになる。これはいつもの事件とは違う。何がなんでも犯人を逮捕しなければならない。誤って捜査官を殺してしまったふたりは、犯人をでっち上げようとするのだが……。

 こうやって物語のあらすじだけを書くと、ひどく陰惨なものにも思えるのだが、ふたりの悪徳刑事を演じているのがジェームス・ベルーシとトゥパック・シャクールなので、ギトギトの悪徳警官という感じはしない。この映画の中のふたりは、ふとしたきっかけで悪事に足を踏み入れてしまった「小悪党」であって、根っからの極悪人というわけではないのだ。捜査官殺しというトラブルを通じてふたりの刑事の関係がギクシャクしてくるのだが、犯行を悔いる黒人刑事にしたところで「捜査官を撃ったのは失敗だった。なぜ事前に確認しなかったのか」「今まで9人殺して、10人目に失敗した」という点を悔いているわけで、本物の麻薬ディーラーを殺すことには何の良心の痛みも感じてはいない。ずるく立ち回ろうとする彼らは確かに愛すべき「小悪党」だが、彼らはそもそも根本的なところで足を踏み外しているのだ。

 ホームレスを身代わりに立てて難局を乗り切ろうとした彼らだが、アル中で身寄りのないはずのホームレスに弁護士が付いたあたりから雲行きが怪しくなる。弁護士を演じているのは、ベテランのデビッド・ペイマー。僕の大好きな脇役俳優で、彼が出てきたからには事件がすんなり終わるはずがない。じつはこのホームレス、アメリカ有数の企業グループをたばねる、大社長の御曹司だったのだ。当然、大物弁護士が弁護に加わる。これがジェームス・アール・ジョーンズ。この顔ぶれはすごいぞ。物語は二転三転して、収まるべきところに収まる。ただし、終盤はあまり面白くない。どうせなら事態をもっともっと混乱させて、ぐちゃぐちゃにしてほしかった。

 黒人刑事ロドリゲスを演じたトゥパック・シャクールは、この映画の撮影終了1週間後に、何者かに射殺されている。若い黒人の中堅俳優として、前途有望な人だったのに残念。この映画と共に、アメリカの銃社会の恐さを感じさせるエピソードです。

(原題:GANG RELATED)


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