リトル シティ

1999/01/29 メディアボックス試写室
『妻の恋人、夫の愛人』に次ぐ、ジョン・ボン・ジョヴィの主演作。
本当の恋を探す男女5人を描くコメディ。by K. Hattori


 『妻の恋人、夫の愛人』のジョン・ボン・ジョヴィと、『最高の恋人』『マイ・フレンド・フォーエヴァー』のアナベラ・シオラが共演した、少し辛口のラブ・コメディ。主人公たちの言う「小さな町」サンフランシスコを舞台に、ふたりの男性の間で揺れ動くニーナ、親友の恋人を寝取ったケビン、昔の恋人が忘れられないアダム、レズの恋人に振られたケイト、新しい出会いを求めているレベッカなどが、ジグソーパズルのように入り乱れながら物語を綴って行く。中心になるのはボン・ジョヴィ演じるケビンと、アナベラ・シオラ演ずるニーナ、それにアダムの三角関係だが、だれかひとりが物語をリードするわけではない。雰囲気としては、キャメロン・クロウの『シングルス』に似ているかもしれない。ちなみに、ケイトを演じるのは『秘密の絆』のジョアンナ・ゴーイング。レベッカ役は『カリートの道』のペネロープ・アン・ミラーが演じている。

 この映画では、状況説明や登場人物たちの心理状態を説明するのに、ケビンの断酒会での告白、ニーナの教会での告解、アダムのタクシー無線、ケイトの精神分析医のカウンセリングなどがうまく使われているのがユニーク。アメリカ人はこうやって、自分以外の誰かに悩みを打ち明けたり、相談を持ちかける対象を持っている。映画の中ではこうした「告白シーン」が物語を小さなまとまりに分解して、エピソードの語り手を切り替えたり、時間を省略したりする「幕間」として機能し、映画全体に一定のリズムを生み出しているのだ。

 サンフランシスコはそれなりに大きな都会のはずなのに、登場人物が全員知り合いという展開を、「小さな町だから全員が知り合いだ」という台詞で押し通してしまうのが痛快。この台詞があるとなしでは、映画の受け止め方がずいぶんと違ってくるはず。これが長編劇場映画デビュー作となる監督・脚本のロベルト・ベナビブは、こうした物語の図々しさを、そうとは感じさせずに描き出すことに成功している。それにしても、この映画に登場するサンフランシスコは、すごく魅力的な町です。サンフランシスコは映画ファンにとって『ダーティー・ハリー』シリーズでお馴染みの犯罪都市だったんですが、最近はずいぶんと安全になったんでしょうか。

 登場人物たちは全員が30歳前後。それぞれに仕事を持って生活は安定しても、恋にはずっと迷いっぱなし。そろそろ「生涯のパートナー」を真剣に選ぼうとする年齢になって、全員がそれぞれの「青春のしっぽ」を切り離して大人になって行く。僕は年齢的にもこの映画の登場人物たちと近いので、映画のそこかしこで「こんな奴っているよな」とか「こんなことってアルアル!」と大いに共感ながら観ていました。

 バラバラだったジグソーパズルが、収まるべきところに収まる大団円の手並みの良さは、見事と言うしかない。それまで一瞬先もわからなかった人間関係のゴタゴタが、最後にピタリと決まるのは快感です。

(原題:Little City)


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