バグズ・ライフ
(日本語吹替版)

1999/01/18 ブエナビスタ試写室
バッタと戦うアリたちを描くピクサー製作のCGアニメ大作。
シネスコ画面にもちゃんと意味がある。by K. Hattori


 先週この映画の字幕版を観たんですが、途中で不覚にも寝てしまったこともあり、今週は新たに「日本語吹替版」を観てきました。前回は試写の10分前に試写室が満席になったのに、今回は半分ぐらい空席があったのはなぜだろう。混んでいたのは最初だけで、もう空いてきてしまったんだろうか。それとも日本語吹替版の試写を、わざわざ観ようという人が少ないんだろうか。

 確かに一般のディズニーアニメは、吹替にするとミュージカル場面で訳詞に無理が生じることがあり、いくぶんか白けてしまうことがあります。でも『バグズ・ライフ』にはそんなところがまったくない。むしろシネスコCG映像のクオリティの高さを隅々まで鑑賞するには、字幕を追わずにすむ吹替版の方がいいんじゃないだろうか。もっとも一般劇場で観る場合、吹替版は親子連れが多いので鑑賞マナーが悪くなる可能性が考えられます。でもこんな映画は、そもそも大勢でワイワイガヤガヤ楽しむのが、正しい鑑賞法ではないだろうか。僕なら迷わず吹替版をオススメしちゃいます。(ただし、ケヴィン・スペイシーのファンは字幕版を観なさい!)

 監督のジョン・ラセターが宮崎駿のファンであることはよく知られているが、この映画に飛行シーンがやたら多いのは、そんな宮崎びいきのなせる業かもしれない。主人公フリックがタンポポの綿毛に乗って谷を越える場面の浮遊感や、バッタたちが猛スピードでアリの巣を目指すスピード感は、かなり宮崎アニメを研究しているぞ。特に影響力が顕著なのは、無数のバッタたちがアリの巣から次々に飛び立つ場面。小さな穴からバッタたちが猛スピードで飛び立ってゆく姿は、『天空の城ラピュタ』の小さな羽ばたき飛行機をすぐに思い出させます。

 CGアニメでシネスコとは贅沢だし面倒くさそうですが、主人公が昆虫たちなので当然視点はローアングルになり、横長のスクリーン一杯に地平線が映し出されます。シネスコ画面には、こうした「ミクロの視点」を強調する役目があるのです。こうした画面の効果が最大限に生かされているのは、クライマックスに用意されている、雨の中での追撃戦。空中から巨大な爆弾のように落下してくる雨粒を左右にかわしながら、フリックとアッタ姫が猛スピードでホッパーから逃げるシーンの迫力は、シネスコの画面を左右一杯に使うことで倍増しています。

 前作『トイ・ストーリー』でも子供だましでない脚本に感心しましたが、『バグズ・ライフ』でもそれは同じ。単純と言えば単純、ご都合主義と言えばご都合主義ですが、僕はわかりきったラストシーンに感激して、思わず涙がこぼれそうになってしまった。バッタたちを撃退したところで物語そのものは終わるのですが、その後も感動的な場面の連打と勇壮な音楽の力を借りて、観客を強引に感動させてしまう。ここで他愛なく感動させられてしまうのは、もちろんそれまでの話がきちんとできているからです。『トイ・ストーリー』はパート2が作られますが、僕は『バグズ・ライフ』の続編も観たいよ!

(原題:A Bug's Life)


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