バグズ・ライフ

1999/01/12 ブエナビスタ試写室
『トイ・ストーリー』のスタッフが作った最新の長編CGアニメ。
昆虫の世界を舞台にした冒険活劇だ。by K. Hattori


 『トイ・ストーリー』のスタッフが作った、昆虫版『七人の侍』。毎年秋になると、アリの国にはバッタたちが来て、その年収穫した食料の半分を持ち去って行く。はみ出し者の働きアリである主人公フィリックは、アリの国をバッタたちから守るため、町に出て強力な助っ人を雇うことを提案する。だがフリックが町で見つけたのは、サーカスを追い出された芸人たちだった。フリックは彼らを無敵の英雄だと思いこみ、芸人たちはフリックを芸能プロモーターだと思い込んでいる。双方が互いの間違いに気づいたとき、既にバッタたちの襲撃は目前に迫っていた。はたしてアリたちの運命は?

 アリの世界をCGで描いたアニメと言えば、つい先頃公開された『アンツ』を嫌でも連想してしまうのだが、『バグズ・ライフ』は「変わり者で厄介者のアリが、アリ王国の危機を救って一躍ヒーローになる」という基本的なモチーフを除けば、まったく別の作品だ。まず何と言っても、キャラクターの造形が違う。『アンツ』のキャラクター・デザインはユニークだったけど、『バグズ・ライフ』の方が何十倍もかわいいぞ。CG技術のテクニカルな部分はよくわからないのですが、数で「すごい!」と思わせた『アンツ』より、各キャラクターの動きや背景の緻密さで『バグズ・ライフ』の方が一枚上手。これはさすがに、前作『トイ・ストーリー』での経験が生かされていると思う。『トイ・ストーリー』ではある程度抽象的に描かれていた背景が、この『バグズ・ライフ』ではぐっとリアルになったのが印象的だ。CGの技術は、年々飛躍的な進歩をしているのですね。

 今回観たのは字幕スーパー版ですが、悪役ホッパーの声をケヴィン・スペイシーが担当しているのが目に付く程度で、基本的にはキャラクター重視のキャスティングになっているようです。どの声も、キャラクターにぴったりと合っていました。このあたりは、声優にキャラクター・デザインを合わせた『アンツ』との、映画に対する姿勢の違いが見えるようで面白い。『バグズ・ライフ』は日本語吹き替え版も公開されるので、これも近々試写を観に行くつもり。キャラクターもかわいいし、話も単純な冒険活劇なので、子供が観ても楽しい映画かもしれません。『アンツ』はややマイナーな公開のされ方だったので、『バグズ・ライフ』には期待してます。

 じつは映画の終盤の肝心なところで少しウトウトしてしまったので(寝不足気味なんです)、映画としての評価が正しく下せない。よってこれは、日本語吹き替え版を観たときに改めて書くことにする。しかし、最後の雨のシーンのド迫力には、すっかり目が覚めた。この土砂降りは、黒澤映画以上です。おそらく、世界映画史上「最大」の雨が降ってくる映画だと思います。

 映画が終わったと思って、慌てて劇場を出てはいけません。この映画には、最近の映画にはよくあるNG集が付いてます。もちろんCG映画ですから、このNG集もわざわざこのために作ったもの。何とも贅沢です。

(原題:a bug's life)


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