T-REX

1998/12/01 東京アイマックスシアター
アイマックスの巨大スクリーンの中で3Dの恐竜たちが大暴れ。
今まで観た3D作品の中で最高に面白い。by K. Hattori


 アイマックスの大スクリーンでは、でかいものを観るのがいい。例えば海底に眠るタイタニック号、星空にポッカリと浮かぶ宇宙ステーション、世界最高峰のエベレスト、そしてティラノサウルス。『ジュラシック・パーク』や『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』で恐竜映画は打ち止めかと思われましたが、アイマックスの3Dで観る恐竜はすごい迫力だぞ。上映時間45分の内、恐竜が登場するのはわずか10数分だと思うけど、この映画こそ「恐竜映画の決定版」になるでしょう。

 古生物学者の父を持つ少女が、博物館に父を訪ねた際、恐竜たちの幻影を見るという物語。彼女は幻影の世界の中で、恐竜画家のチャールズ・ナイトや発掘者のバーナム・ブラウンと出会い、数多くの恐竜たちを目撃する。さらには、今なお謎とされている恐竜の子育てや、絶滅の謎に触れる。この映画は巨大恐竜が画面の中を暴れ回る見せ物映画であると同時に、恐竜学の最新研究結果をふまえたドキュメンタリー・ドラマでもあるのだ。恐竜好きな人なら、この映画にワクワクすること請け合い。『ジュラシック・パーク』ほど大げさな映画ではないし、手に汗握るアクションシーンがあるわけでもないが、この映画の恐竜たちには動物園でゾウやサイを見るのと同じような臨場感があります。それだけで充分でしょう。

 監督は『バーチャル・ウォーズ』『バーチュオシティ』『ハイダウェイ』などの作品で知られるブレッド・レナード。バーチャル・リアリティをテーマにした作品で、CGと実写の合成を取り上げている監督だけに、この映画でも恐竜と人物の合成がごく自然に行われている。レナード監督はCG特有のメタリックな質感を、わざとチープに見せる人ですが、今回は徹底したリアリティにこだわりつつ、幻想と現実の境界を行きつ戻りつします。その分、今回は役者がすごくチープで、主人公の少女を演じているリズ・スタウバーも、父親役のピーター・ホートンも、映画ファンにはあまり馴染みのない顔でしょう。特に主演のスタウバーについては、「もっと可愛い子は使えなかったのか!」と文句を言いたくなるほどです。これじゃ単なる恐竜オタクのブスじゃないか。

 ティラノサウルスの骨格標本がゆっくりと動きだし、それが生身の恐竜に変貌して歩き始めるイメージは、レナード監督のタッチだと思う。恐竜がもとの骨格標本に戻る場面の唐突さも、レナード・タッチかな。予算の都合で全編恐竜にはならないのでしょうが、欲を言えば、動き始めた恐竜が展示室から細い廊下にゆっくり歩いて行くシーンがあると面白かった。

 物語そのものは単純そのものですが、45分の映画ならこんなものでしょう。あくまでも主役はティラノサウルスですし……。『ジュラシック・パーク』の衝撃はありませんが、生々しさではこちらの方が上。少なくとも『GODZILLA』よりもだいぶ面白い。アイマックスシアターでは2D作品『エベレスト』が好評のようですが、『T-REX』もヒットの予感がします。

(原題:T-REX / BACK TO THE CRETACEOUS)


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