ジョー・ブラックをよろしく

1998/11/19 UIP試写室
ブラッド・ピット扮する死神が大富豪の娘と恋に落ちる。
上映時間3時間1分でブラピに惚れた。by K. Hattori


 1934年にフレドリック・マーチ主演で作られた映画『Death Takes a Holiday』に着想を得て、『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』のマーティン・ブレスト監督が作ったロマンチック・コメディ。元になった映画は1920年代の舞台劇が原作だと言うから、かれこれ70年以上昔の素材が現代によみがえったわけだ。どうりで、映画全体からクラシカルな雰囲気が漂ってくるはず。もっとも本作は昔の映画のリメイクではなく、物語もキャラクターも完全なオリジナルとして作り直されているらしい。上映時間3時間1分という長尺映画だが、内容にはずっしりとした手応えがあって、途中でダレることはない。ブラッド・ピット、アンソニー・ホプキンス、クレア・フォラーニなどの出演者も適材適所の配役で、話も面白いし、衣装や音楽なども素晴らしい。アメリカでは期待されていたほどヒットしなかったようだが(それが原因でユニバーサルのトップは更迭されてしまった)、内容は文句なしにオススメできます。

 人間の世界に興味を持った死神が、世界有数のメディア王、ウィリアム・パリッシュのもとを訪れてひとつの条件を出す。「お前は間もなく死ぬが、その前に私を連れて人間界の案内をしてくれ。その間だけ、お前の命を長らえさせよう」。死神は交通事故にあった青年の身体を借りて、パリッシュ家の客人になる。だがパリッシュの娘スーザンは、その日の朝、死神に身体を奪われる前の青年と親しくおしゃべりをしたばかりだった。好意を持った青年が突然家に現れたのを見て、スーザンは心を動かされる。そして死神も、スーザンに少しずつ惹かれて行くのだ……。この映画は、ひとりの人間が自分の半生を振り返って、名残を惜しみつつもこの世を去って行く物語。同時に、愛を知らなかった死神が、人間たちの美しくはかない愛の素晴らしさに目覚める物語だ。

 世の男性は、間違ってもこの映画をガールフレンドと観に行ってはいけない。この映画のブラッド・ピットは、美しすぎる。役柄が人間ではないので当然かもしれないが、あらゆる人間が持ち合わせている雑味のようなものが抜け落ちて、繊細さと優雅さを漂わせながらも、しかも無垢な人間として存在している。この映画のブラピを見たら、他のどんな男も見劣りしてしまう。さらに、この映画の最後に用意されている豪華なパーティー・シーンを見れば、映画の後のどんな食事もみすぼらしく貧弱なものに見えてしまうはずだ。この映画は、デートで観るには不適当。女の人たちが連れ立って、ワーキャー叫びながら見るのがよろしい。特にブラピのファンでなくても、この映画のブラピには惚れること間違いなしだ。

 最後のパーティー場面では、バンドが演奏する曲目がドラマを盛り上げる。死神ジョーとスーザンが愛を語る場面の「ラブ・イズ・ヒア・トゥー・ステイ」もいいし、パリッシュが裏切り者を追い出す場面の「エニシング・ゴーズ」も愉快。そして父と娘のラストダンスは「ワット・ア・ワンダフル・ワールド」だ。これには泣けた。

(原題:MEET JOE BLACK)


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