燃えよドラゴン
ディレクターズ・カット25周年記念版

1998/11/01 パンテオン
東京国際ファンタスティック映画祭
ブルース・リーの代表作をディレクターズ・カットで上映。
オマケの上映の方が楽しかったりして……。by K. Hattori


 ワーナー映画の創業75周年を記念した東京ファンタの特別上映で、トップバッターとして上映されたのがこの映画。3分間の未公開シーンを加えたディレクターズ・カットというのが売り文句だが、それよりむしろ、パンテオンの大スクリーンで、ニュープリントのブルース・リー映画を観られることのほうが重要だろう。こんな機会は、これから先もそうそうあることではない。

 ワーナー映画のアニバーサリー上映ということもあり、『燃えよドラゴン』の前にはワーナー映画の歴史をハリウッドのスターや監督たちが語るドキュメンタリーを上映し、ブルース・リーの未亡人であるリンダ・リーの舞台挨拶があり、さらにブルース・リーのインタビューで構成されたドキュメンタリー映画が上映されてから、いよいよ本編がはじまった。有名なテーマ曲が劇場に響き渡ると、客席からはスクリーンに向けて盛大な拍手が送られる。これは他の映画祭ではなかなか見られない、東京ファンタならではのお約束だ。

 僕は『燃えよドラゴン』の日本公開時には小学生で、劇場ではついにブルース・リーと出会わないまま大人になってしまった。でも当時は子供たちの間でもブルース・リーのカンフー・アクション映画が大ブームで、「アチョー」という怪鳥音を叫びながら、小学生がカンフーごっこをしていたものです。ヌンチャクも大ブームになって、学校には持ち込み禁止になってしまった。昔の映画というのは、こうした社会現象とともに記憶に刻まれているものです。今回の記念上映では、壇上に現われたリンダ・リーを前にして、司会進行役の小松沢プロデューサーが感極まって絶句するシーンがあった。ある年代の映画ファンにとって、ブルース・リーの名前は特別すぎるのでしょう。僕はさすがに、そこまでの思い入れがないんだけどね……。(そういえば『ブギー・ナイツ』の主人公も、ブルース・リーの真似してましたね。)

 映画の舞台は香港で、主人公も中国人なのに、映画はワーナーで世界配給されて大ヒット。アメリカの観客にも親しみやすいように、映画にはアメリカ人の武術家も登場する。でも映画の基本は、中国人同士の争いです。少林寺で武道の奥義を極めた主人公リーは、かつて同じ少林寺に学びながら、今は悪の道に踏み込んだ先輩武術家の話を聞き、彼と対決するため孤島の武術トーナメントに出場する。この強敵は、じつはリーの妹の死にも深く関わっていたという因縁がある。その後いろいろあって、最後は主人公が的を倒してハッピーエンド。敵の男の設定が『スター・ウォーズ』のダース・ヴェイダーに似ているし、映画のクライマックスにある鏡の間で、主人公が老師の声を聞く場面も『スター・ウォーズ』そのもの。この映画が与えた影響が、いかに広範囲に及んでいるかがよくわかる場面です。

 僕も最近中国古典に目を通したりしているので気付いたんですが、ブルース・リーがインタビューで語っていた「水のように」という言葉は「老子」の引用です。

(原題:Enter The Dragon: 25th Anniversary Edition)


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