ビッグ・ヒット

1998/10/30 SPE試写室
アルバイトで誘拐に荷担した殺し屋が人質と恋に落ちる。
スナック菓子のように軽いアクション映画。by K. Hattori


 『ブギー・ナイツ』のマーク・ウォルバーグが主演した、ギャング・アクション・コメディ。お人好しで女にたかられてばかりいる若い殺し屋が、仲間の計画した誘拐事件を手伝ったばかりに、組織に追われるようになる。ウォルバーグ以外に、ルー・ダイアモンド・フィリップス、ボキーム・ウィドバイン、アントニオ・サバト・Jr.などの若手俳優が出演している。また、誘拐される日本人女子学生役で、モデル出身のチャイナ・チャウが映画デビューを飾っているのも見逃せない。監督は香港で『ガンメン/狼たちのバラッド』や『新ポリス・ストーリー』などを撮ったカーク・ウォン。これが彼のハリウッド・デビュー作になる。製作総指揮は『フェイス/オフ』の成功で、すっかりハリウッドに根を下ろしたジョン・ウーだ。彼は最近、香港出身の監督や俳優がハリウッドに進出する際の、重要な窓口になった感がある。

 マーク・ウォルバーグ扮する凄腕の殺し屋メルビンが、ルー・ダイアモンド・フィリップス扮する仲間、シスコに誘われて加わった、日系電機メーカーの社長令嬢誘拐事件。ところが社長の会社は破産しており、100万ドルの身代金などとても払えない。社長は旧知のギャングに娘の救出を依頼するが、そのギャングとはメルビンやシスコのボスだった。身内から裏切り者が出たことに怒り狂うボスは、シスコに裏切り者の探索と処刑を命ずる。自分が誘拐の張本人であるにもかかわらず、シスコは自分の身かわいさから仲間を次々殺して行く。一方メルビンの方は、人質のケイコと急速に親しくなり、やがてふたりは運命的な恋に落ちて行くのだった……。

 映画の印象は、ひたすら軽い。しかしこの軽さは、決して安っぽいという意味ではない。この映画には、この軽さや騒々しさが必要だったと思う。リアリズムとは無縁なので、アクションに生身の肉体の痛みを求める人には不向きだと思う。お話の方も、主人公とヒロインが恋に落ちる必然性などさらさらない。ご都合主義だし、話の展開も強引。でもこの映画は、芝居や演出にテンポがあるので、最初から最後まで一気に通しで観せられてしまうのだ。この内容で1時間半という上映時間は、まさに適正サイズだろう。これ以上長くなればダレてくるし、短ければ物足りない。登場人物の性格はペラペラの紙細工のようだが、話そのものは仲間同士が裏切ったり殺し合ったりする陰惨なものなので、このぐらいペラペラなキャラクターの方が感情移入を排して楽しめるのだろう。

 映画の冒頭にある大銃撃戦は荒唐無稽なアイデア満載で、思わず「うっそ〜!」と叫んで笑い出さずにはいられないようなもの。体操あり、ブレイクダンスあり、バンジージャンプありのアクロバチックなガンアクションには、目が点になります。この映画のもったいないところは、これに匹敵するアクションシーンが映画の後半にはないこと。森の中でのカーチェイスというのは面白いけど、最後のビデオ屋での対決はやや退屈かな。何にせよ、観た後なにも残らないアホな娯楽作です。楽しい!

(原題:the big hit)


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