ターニング・ラブ

1998/10/28 ワーナー試写室
熱烈に愛し合ったカップルにもいつか別れの時がくる……。
エピソードはリアルでも映画としては力不足。by K. Hattori


 『L.A.コンフィデンシャル』で一躍脚光を浴びたラッセル・クロウと、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』の女吸血鬼や『デスペラード』のヒロイン役で知られるサルマ・ハエック主演のラブ・ストーリー。と言ってもこれは、主人公たちが愛を育んで最後にハッピーエンドになる物語ではない。物語が始まった時点で、主人公たちは既に交際2年半。最初は仲睦まじかったふたりの関係もギクシャクし、口論が絶えなくなっています。何度か別れを口にし、実際にしばらく離ればなれになってみても、再びよりを戻してはまたケンカをする繰り返し。やがてふたりは結婚を決意しますが、そこで決定的な事件が起こって……、というお話。いわばこれは、愛が壊れて行く課程をつぶさにとらえたアンチ・ラブ・ストーリー。親密だったふたりの関係が他人になるまでを描いた、恋愛映画の逆パターンなのです。

 世の中には、それまで他人同士だった男女が知り合っい、恋に落ちるカップルがいる一方で、強く結ばれていた関係を解消して別れてしまうカップルもいる。映画に登場するのは、ほとんどが前者です。後者を描く場合でも、「愛し合いながらも別れる」といった悲恋物語にする場合が多いと思う。でも、世の中の普通のカップルは、「愛しているけど別れる」なんて格好のいいことをしているわけではないのです。関係にすきま風が吹き、気まずい関係を維持できなくなって別れてしまう場合の方が多いと思う。もちろん、カップルのどちらか(あるいは両方に)別の恋人ができる場合もあるでしょうが……。

 この映画では、主人公スティーブとモニカのどちらも、別に好きな人ができたわけでも浮気をしたわけでもない。長くつき合っている内に、互いに相容れない部分が多くなって別れてしまう。どちらかの浮気が原因なら、別れはもっとスムーズにいくのでしょうが、このカップルは当座つき合っている相手が他にいないので、何度もよりを戻してしまいます。もう二度と、つきあい始めた時と同じような情熱を相手に感じることがないとわかっていながら、何とかそれを取り戻そうとあがくふたり。「別れよう」「もう会わない」と口先では何度も繰り返しながら、それでも会ってセックスしてしまえば、その時は幸せな気分にひたれる。他人から見れば未練がましく、意気地のないふたりの関係ですが、幾度か出会いと別れを経験した人なら、ふたりの気持ちがよくわかるはずです。僕もいくつかの場面で、「僕にも似たようなことがあったな」と思いました。身につまされます。

 ただそれを映画にするには、もっと芸が必要だと思う。この映画は1時間半に満たない小品ですが、途中からは「いい加減にしろ!」「もういいから別れろ!」と思いながら映画を観ていた。別れたりよりを戻したりという繰り返しもダラダラ続くばかりで、脚本には何の工夫もない。これは短いエピソードで、もっと端的に関係を印象付けられるはずです。サルマ・ハエックも、『愛さずにはいられない』の方が魅力的だったしなぁ……。

(原題:Breaking Up)


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