新・極道渡世の素敵な面々
女になった覚えはねぇ

1998/09/28 東映第1試写室
原田龍二が初主演したやくざ映画は、内容が支離滅裂。
原作・安部譲二、監督・和泉聖治。。by K. Hattori


 10年前に陣内孝則主演で『極道渡世の素敵な面々』を作った原作者・安部譲二と監督の和泉聖治が再びコンビを組み、前作とはまったく別のコンセプトで作り上げた新作やくざ映画。原田龍二が若いやくざ役で初主演し、その兄貴分が哀川翔、親分が梅宮辰夫というキャスティング。刑務所を出てきた若い男がやくざの幹部に飯をおごられ、故郷に帰るはずが東京に居残ってやくざになってしまうというオープニングはまずまずの滑り出し。しかし、冒頭に出てきた大和武士はその後消えてしまい、オープニングとそれ以降の物語はつながらない。やくざの事務所に出入りしていた主人公はつまらないことでクビになり、その直後、また別のやくざ事務所で舎弟志願。ここでも最初にいた事務所と、後から入った事務所の話がつながらない。とにかく、この話はつながりがデタラメすぎる。もっとスッキリした話にならないものか。

 とにかく主人公の行動動機がまったく不明、もしくは場当たり的に見えて、映画を観ている最中ずっと「おいおい、それでいいのか!」とツッコミを入れ続けていた。最初にいたやくざ事務所で、債権回収に向かう動機がまず薄い。その事務所をクビになった直後、知り合ったばかりの若い女に突然結婚を申し込むのも唐突。女の兄に会いに行って、とつぜん舎弟にしてくれと申し出るに至っては狂ったとしか思えない。「堅気になれ、堅気に!」と怒鳴りたくなってしまった。

 組長の息子が多額の借金をこしらえ、それが原因で組は解散。事務所だったビルを使って元組員たちがいろいろな商売を始めるあたりは面白いが、それも中途で挫折。堅気になる道を捨ててわざわざやくざ志願した主人公が、なぜ組にしがみついているのかもわからない。兄貴分の哀川翔に対する義理立てか、それとも親分の梅宮辰夫に惚れ込んでいるせいなのかが不明確なのです。彼は女に惚れていたから、その兄である哀川翔に認められたくて舎弟になったんじゃなかったのか。主人公は女が好きなのか、それとも哀川翔が好きなのか、組長が好きなのか、その点がまったく見えなくなってしまった点が弱い。

 中国人マフィアの悪辣さはよくわかるのだが、最初に中国人から借金した村野武範が、なぜ1億5千万もの借金をしたのか、その理由がまったく描かれていない。このあたりは、劇中でほんの数行の台詞を作っておけば説明になるはずなのに、それを怠っている。村野武範は小橋組の代貸しという設定だが、彼が殺された後、借金は小橋組長が肩代わりしている。彼は梅宮辰夫の借金5千万も肩代わりしているから、小橋組にはそれなりの財政的な基盤があったはず。代貸しの村野武範が借金をしなければならない理由が、こうなるとますますわからない。個人的な借金ということだろうか?

 最後のなぐり込みにしても、彼らはいったい何を守るために身を捨てて中国人マフィアと戦おうとしたのか。中国人を殺すことで、何がどう変わるというのか。こうした基本が飲み込めないので、話に納得できないのだ。


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