パパラッチ

1998/09/25 メディアボックス試写室
フランス映画祭でも好評だった作品がめでたく日本公開決定。
この冬は、この映画を応援しちゃうぞ!by K. Hattori


 今年の6月のフランス映画祭で上映され、観客から好評を博した作品が、K2エンタテインメントの配給で正式に日本でも公開されることになりました。残念なのは、日本で唯一の上映館が銀座シネパトスだということ。大きな劇場は半年や1年前からスケジュールがふさがっているので、この映画を買い付けた時点ではシネパトスしか取れなかったとか。本当に面白い映画なのに、これはもったいなすぎる。シネパトスが悪い劇場だとは言いませんが、このクラスの映画なら、ル・シネマや恵比寿ガーデンシネマでも、お客さんは来たでしょうに……。

 シネパトスでかかる映画ですから、放っておいてもすぐにビデオが出るでしょう。でも、この映画ってシネスコサイズなんだよね。ビデオになる時は、画面の半分がトリミングで消えてなくなります。映画がいけすの中の生きた魚だとしたら、トリミング版のビデオはそれを活け締めにして三枚におろしたようなもの。どちらが気楽かと言えば後者かもしれませんが、映画ファンなら生きてピチピチしている作品を愛でてほしい。僕は本作をフランス映画祭でも観ているのですが、今回改めて観て、この冬はこの映画を勝手に応援しようと決めました。

 映画祭で上映したものからは字幕を大幅に変えたそうで、前回観たときに比べると、人物配置などがスッキリわかりやすくなっています。前回は、ヴァンサン・ランドン演ずるミシェルと歌手サンドラとの関係がよくわからなかったのですが、今回観直して、ふたりが10年以上前に恋人同士だった時期があること、別れた後も互いの友情を大切に守ってきたこと、一匹狼のミシェルにとって、彼女だけが唯一心を許せる存在であることがよくわかる。パパラッチとしてトップの地位にありながらも、ミシェルの情熱の源泉は「写真を撮る」という行為の中にある。高額の報酬はその結果でしかないのです。

 タイプの違うふたりの男が出会い、互いに影響し合いながら成長して行くバディ・ムービーです。ミシェルはパパラッチ見習いのフランクを通して、自分の仕事を客観的に見るようになる。フランクはミシェルを通して、自分の中に隠されていた新たな才能に気づく……。この映画に好感が持てるのは、ミシェルもフランクも生きるのに必死になっているからです。夜警の仕事をクビになったフランクが、家族や子供や家のローンのために、猛スピードでパパラッチの仕事を身につけて行く様子には説得力があります。恥も外聞もお構いなしに、新しい仕事にしがみついてモノにしてしまうフランクに、僕はある種の「男らしさ」を感じてしまうのです。演じているパトリック・ティムシットはどう見ても美男子からは程遠いのですが、いやはや凄い役者です。彼がマンボを踊るシーンは最高。身のこなしがただ事じゃないよ!

 アクション映画のスピード感と、ストレートな人間ドラマと、思わずニヤリとさせられるフランス流のユーモアが同居した傑作。アメリカではまず撮れない、ましてや日本では絶対に撮れっこない映画です。オススメ。

(原題:Paparazzi)


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