ベル・エポック

1998/08/05 東宝第1試写室
仕事と恋と結婚に悩む20代後半から30代の女性たち。
同名人気コミックの映画化作品。by K. Hattori


 同名人気コミックの映画化だそうですが、僕は原作を読んでいないので、脚色がどれだけ優れているのか、それとも原作の魅力を駄目にしているのかについてはコメントできない。監督は松岡錠司。彼は昨年東映で公開された『私たちが好きだったこと』が興行的に惨敗し、公開途中で打ち切りになるという屈辱を味わっている。僕に言わせれば、あの映画に客が入らなかったのは、東映がまったく宣伝らしいことをしなかったせいだと思うけどね。作品としての評価は、そんなに悪くなかったと思う。ただし、前作ですっかり「客の入らない監督」という烙印を押されたのか、今回の『ベル・エポック』に関しては、東京ではシャンテ・シネでの単館公開。フジテレビ製作だから、やる気になればフジサンケイ・グループの媒体を使ったPRも可能だし、出演している俳優たちも今が旬の人たちばかりだから、パブリシティ効果も見込めると思うんだけどな……。駄目ですかね。

 20代後半から30代にさしかかった女性たちの、仕事や恋や結婚について描いたドラマです。主人公は5人の女性たち。アメリカの青春映画にはこの手の集団劇がよくありますが、日本では珍しいかもしれない。話の中心になるのは、やはりそれぞれの恋の悩みだったりするのですが、この映画のテーマは「恋人を見つけること」ではなく、「人生のパートナーを見つけること」です。パートナーが恋人や配偶者であることもあるでしょうし、仕事の仲間や友人であることもある。落ち目のアイドル歌手はマネージャーと和解して、本格的な歌手として再出発する。書けなくなった小説家は、編集者の励ましで再び傑作を書き上げる。学生時代からの親友同士は、自分たちが決して恋人にはなれないことを悟ると同時に、互いが掛け替えのない友であることを知る。

 パートナーとは、自分のことを本当に理解してくれる人のこと。大げさな言い方をすれば、忍耐強く、情け深く、ねたまず、自慢せず、高ぶらず、礼を失せず、自分の利益を求めず、いらだたず、恨みを抱かず、不義を喜ばず、真実を喜び、すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐えてくれる相手。それが恋人であれ、友人であれ、仕事仲間であれ、自分のすべてを受け入れてくれるパートナーを、我々はみんな求めているはずです。その人とは、いつか偶然出会えるのかもしれないし、身近にいる誰かが、じっと自分のことを見守っていてくれるのかもしれない。そんな相手を見つけられれば、人間はきっと幸せになれるに違いないのです。

 各エピソードはそれぞれ面白いし、中には感動的なものもありますが、全体にやや冗漫な印象もあります。上映時間2時間9分を、せめて1時間50分ぐらいに縮められるとよかったんですが……。各人物を均等に描いたため、観客は誰かひとりぐらいは自分に近い人物として共感できるでしょう。でもこれって、手法が『ディープ・インパクト』と同じなんだよね。中心人物を絞って、もっとテーマを明確にすべきでした。


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