エクセス・バゲッジ
シュガーな気持ち

1998/07/23 ソニー・ピクチャーズ試写室
アリシア・シルバーストーン扮するわがまま娘の狂言誘拐が、
やがて自動車泥棒との恋にかわる。by K. Hattori


 タイトルの『エクセス・バゲッジ』は、「飛びきりのオテンバ娘」とでも訳すのかな。物語はちょっと『普通じゃない』に似たところがあり、アリシア・シルバーストーン扮する富豪の娘の偽装誘拐がホンモノに発展し、やがて彼女は自分を誘拐した男と恋に落ちる。ベネチオ・デル・トロが、タカビーな素人娘に翻弄される自動車泥棒を好演。シルバーストーンのちょっと太めのムチムチした感じが、いつも寝不足気味みたいな顔のデル・トロと好対照になっていて、なかなか面白いです。

 甘ったれの金持ち娘エミリーが、父親の気を引きたいばかりに起こした狂言誘拐。身代金100万ドルを海に捨てさせ、自分は駐車場に停めてある自動車のトランクの中で、パパの救出を待つばかり。ところがその自動車が、泥棒に盗まれてしまう。盗んだのはベテラン車泥棒ビンセントだが、彼とて、まさかトランクに女の子が入っているとは知らないからビックリ仰天。このまま自分が誘拐犯にされてしまっては一大事と、何とか彼女を追い払おうとするのだが、計画が失敗して家に帰るに帰れないエミリーは、ビンセントから離れようとしない。ビンセントはエミリーのおかげで仕事上の大失態を招き、ギャングたちに追われるはめになってしまう。

 一方、エミリー誘拐事件を捜査中のFBIは、じりじりしながら犯人からの連絡を待つ。あまり表沙汰にできない仕事を生業としているエミリーの父親は、エミリー捜索を仕事上の部下であり、長年の友人でもあるレイに依頼する。レイに扮しているのはクリストファー・ウォーケンだから、これは迫力がある。

 じつは序盤ですこし眠ってしまい(最近、本当によく寝込む。今日も少し熱があったのだ)、ビンセントが車を運び込んだ倉庫もろとも、10数台の高級車が燃えてしまうくだりを見逃したのだが、資料を見るとどうやらこれはエミリーの火の不始末が原因だったらしい。エミリーのせいで誘拐犯の嫌疑は受けるわ、ギャングに引き渡すはずだった高級盗難車は灰になるわで、まったくいいところがないビンセント。エミリーの父親も、身代金として用意した100万ドルを、意味もなく海の藻屑としてしまった。まったく、エミリーは疫病神です。

 この映画はアリシア・シルバーストーンが主催するファースト・キス・プロダクションの第1回作品で、彼女は主演女優であると同時にプロデューサーも兼任。だてに太ったわけではなかったのね……。監督は『デモリションマン』のマルコ・ブランビヤ。エミリーの父親を演じているのは、『真夜中のサバナ』『ラスト・ウェディング』のジャック・トンプソン。ビンセントの相棒である自動車ディーラーを、ハリー・コニック・Jr.が演じているが、今回は歌も歌わずピアノも弾かずに俳優業に専念。でもこの映画で一番の収穫は、やはりベネチオ・デル・トロでしょう。『ユージュアル・サスペクツ』で見せていた悪党面はそのままに、心優しくロマンチックなところもある男を演じています。今後に注目。

(原題:EXCESS BAGGAGE)


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