ヒューゴ・プール

1998/07/09 ユニジャパン試写室
アリッサ・ミラノがプール管理会社の女社長に扮した人情ドラマ。
中身は漫画だけど、共演者が渋すぎる! by K. Hattori


 ロバート・ダウニーJr.の父である、映画監督ロバート・ダウニーが、妻ローラと共同執筆した脚本を自ら映画化。たったひとりでプール管理会社を切り盛りする少女ヒューゴが、ギャンブル狂の母ミネルバ、麻薬中毒でアル中の気もある父ヘンリーと共に、大忙しの1日を過ごす物語。時間的にはたった1日の話ですが、主人公がトラックで移動する合間に、多趣多彩なエピソードをちりばめる構成からして、これは一種のロードムービーです。主人公ヒューゴを演じるのは、この春に『堕落の園』も日本公開されたばかりのアリッサ・ミラノ。彼女は'72年生まれだから、今更「少女」と呼ぶのも気が引けますが、この映画の中では貫禄たっぷりの両親に囲まれ、否応無しに「少女」にさせられてます。父親を演じたのは怪優マルコム・マクダウェル。母親役はキャシー・モリアーティ。さらに、難病ALSを患う青年フロイド役のパトリック・デンプシー。青い靴のヒッチハイカー役のショーン・ペン。そして、人殺しの映画監督フランク役では、監督の息子ロバート・ダウニーJr.もしっかり出演。これはちょっとすごい面子でしょ?

 お話の方は、ちょっと風変わりなエピソードの連続。真面目に考えると、ここに登場する人たちは全員が気狂いか、少し頭のネジがゆるいように見えてしまう。特にロバート・ダウニーJr.のキレ具合が強烈。映画の撮影中にエキストラから「ヘボ監督」とののしられたのに腹を立て、相手に向かって拳銃を乱射して殺した男。それでいて、優秀な弁護士を雇ったんだか、保釈金を積んだかして、平気の平左でシャバをうろうろしている。そんな太平楽な身分でありながら、ヒューゴに対するプール管理料は6年間も滞納中。加えて、殺した相手の葬式に現れて、蹴飛ばすように棺に土をかける人でなし。こんな異常な役なのに、ダウニーJr.が演じると不思議とチャーミングに見えてしまう。このキャラクターに限らず、この映画には次々と「困った人たち」が登場して、様々な馬鹿馬鹿しいトラブルを巻き起こす。それが魅力的なエピソードに化けるのは、ひとえに演じている役者たちの魅力によるところが大きいのです。

 色とりどりのエピソードを集め、カラフルなパッチワークに縫い上げた針と糸の役目を果たしているのが、アリッサ・ミラノ扮する主人公ヒューゴ・デゥゲイ。彼女も、自分で製作総指揮した『堕落の園』なんかより、この映画の中の方がよほど輝いて見えます。彼女自身は、特に面白い役でもなんでもないんですが、その棒切れのような硬直した存在感が、かえってこの映画では生きていたかもしれない。ここで彼女までいろんな芝居をしはじめると、この映画はきっとバラバラになるでしょう。

 映画にリアリティを求める人は、この映画を受け付けないかもしれない。でも、そもそも1日に45件のプール掃除なんて、絶対に不可能なんだもん。最初から、これは漫画なんです。それがわかった上で、キャーキャー笑いながら面白がるタイプの映画です。

(原題:HUGO POOL)


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