ヒロイン!

1998/07/03 徳間ホール
『Sall we ダンス?』『卓球温泉』の次は、ママさんバレーだ!
室井滋主演のスポーツ根性コメディ。by K. Hattori


 大型スーパーの出店で苦境に立たされている商店街の主婦たちがバレーボールのチームを作り、スーパーの社長夫人が作っている精鋭チームに戦いを挑む。寄せ集めメンバーで作ったチームは、大学時代にバレーをしていたと言う若い新聞記者をコーチに招いて猛特訓。商店街チーム「なにわボンバーズ」は、スーパーチーム「ピンクサファイア」に勝利することができるのか? 傑作『のど自慢』の公開も控えている室井滋が、主人公である酒屋の女主人・浜崎百合子を熱演。彼女とは小学校時代からのライバル、スーパーの社長夫人・長峰紀子に扮しているのは中川安奈。なにわボンバーズを指導する新聞記者・大橋蔵之介役で、伊原剛志が出演しています。監督の三原光尋は『真夏のビタミン』などで知られるインディーズの映画作家ですが、今回の映画が本格的は劇場映画デビュー作になるそうです。

 この内容なら正統派のスポーツ根性ドラマも作れそうですが、映画のタッチは漫画チックなギャグ作品の方向を狙っているのかな。ちょっと作り手の指向がわからなくて戸惑う点もあります。ギャグとしては、シーンごとのめりはりがもうひとつだし、テンポやキレが悪いように感じました。特に犬猿の仲である百合子と紀子の対決シーンの演出など、あと一歩で完全なギャグになる寸前で止まってしまっている感じがします。

 例えば、商店街の入り口にある橋の上で、ふたりがにらみ合う場面。マカロニ・ウェスタン風のカット割でふたりの姿を撮影していますが、ここまでやるなら、扇風機を使って盛大に砂埃をたてたり、ごみ屑が足元を転がって行くところまで行ってほしい。試合会場でボンバーズとピンクサファイアのメンバー同士が衝突する場面も、登場する紀子を描くのに、あのカット割はないでしょう。あそこは一触即発のにらみ合いに、紀子の声がオフで「お待ちなさい!」と入って、次の瞬間に紀子のアップに切り替え、そこからカメラがプルバックすると、階段の両側にサファイアのメンバーをはべらせながら紀子が颯爽と階段を降りてくるようにしなきゃね。

 カット割りやフレーミングの中途半端さから、本当なら面白くなるはずのミュージカル場面も、何となく生ぬるいもので終わっていたのが残念。音楽を単なるBGMに使うのではなく、ここでは恥ずかしげもなく口パクで歌うように作ってほしかったし、橋の上でボンバーズが踊る場面などは、カメラポジションをもう少し左に寄せて、きちんと左右対称の構図を作ってくれ。

 バレーチームの活躍がきっかけになって、商店街がどんどん活性化して行く様子もきちんと描いてほしい。この映画では、チームの活躍とまったく無関係に、勝手に商店街に客が増えたように見えてしまうよ。夫に先立たれた主人公が新たな恋に落ちるとか、宿敵同士だった百合子と紀子が最後に和解するとか、この手の映画では必須とも言えるエピソードが欠けていたのも気になる。全体に、あともう一歩及ばなかった残念賞映画です。


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