ゴジラ
GODZILLA

1998/06/22 日本劇場(試写会)
日本原産の怪獣映画をアメリカに輸出したらこうなった……。
これじゃ怪獣じゃなくて大トカゲです。by K. Hattori


 いよいよ登場したアメリカ版ゴジラです。新たにデザインされた容姿が発表されるやいなや、「巨大イグアナだ」と憎まれ口をたたかれていたゴジラですが、これが比喩的な物言いではなく、ただ単に事実を述べていただけだということを初めて知りました。今回のゴジラは、水爆実験が原因で太古からよみがえった恐竜の末裔ではありません。水爆実験の放射線がイグアナの遺伝子に影響を与え、突然変異種として生まれた巨大生物なのです。最初からこんな調子ですから、この映画を「ゴジラ映画」だと思って観ると失望するでしょう。今までもゴジラ映画にさんざん失望してきたファンは多いでしょうが、それでも映画館の大スクリーンで「ゴジラ」が動き回っているかぎり、その失望の大半は埋合わせできた。でも今回スクリーンに登場するのは、そもそもゴジラではありません。タイトルにはゴジラの名を冠していますが、これはゴジラが登場しない初めてのゴジラ映画なのです。

 ストーリーはマイケル・クライトンの小説版「ジュラシック・パーク」の後半部分に大きく影響を受けているのが明白ですが、映画に登場する人物周辺のエピソードで一番この映画に近いのは、ヤン・デ・ボン監督の『ツイスター』でしょう。『ツイスター』の竜巻を怪獣に置き換え、竜巻マニアを軍隊とミミズ博士に置き換えると、新作『ゴジラ/GODZILLA』が一丁上がりという寸法です。『ツイスター』はドラマ部分がスカスカの映画でしたが、今回の『ゴジラ/GODZILLA』も、それに負けず劣らずスカスカの物語展開。ここまで内容が皆無だと、いっそ清々しい印象さえ受けます。

 竜巻には生きる目的もへったくれもないのと同様、この映画のゴジラにも目的が見えません。だからサスペンスがちっとも盛り上がらない。ゴジラに明確な目的があり、それを人間側がなんとか阻止しようとするからこそ、映画には対決の構図が生じ、サスペンスが生まれるのです。でも今回のゴジラは、ただ単に軍隊から逃げ回っているだけ。ニューヨークに上陸する必然性なんて、少しもありはしない。このあたりは、新生『ガメラ』シリーズの爪の垢でも煎じて飲んでほしい。ビルの間を猛スピードで逃げるゴジラを、低空飛行のヘリコプターが追跡するシーンなどは迫力がありますが、この映像感覚は限りなくテレビゲームに近いものです。だいたい、ゴジラに反撃されたら、ヘリは上空に逃げなさい!

 ゴジラが明確に人間にターゲットを絞り、それから逃げ回る終盤のアクションシーンは、前半よりよほどスリルがあります。でもこうした場面は、『ジュラシック・パーク』や『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』で何度も観ているから新鮮味はまったくない。ブルックリン大橋のシーンは、『キングコング』だしなぁ……。

 オープニングで襲われるのが日本の漁船で、唯一生き残った老人が病院で「ゴジラ」と呻くあたりまでは、何とかオリジナルのゴジラ映画に敬意を払おうという意図も見えるんですが……。でもそれだけです。

(原題:GODZILLA)


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