ろくでなしBLUES'98

1998/05/04 有楽町朝日ホール
前田憲作主演で描く、シリーズ第2弾。監督は室賀厚。
アクション・コメディの快作です。by K. Hattori



 週刊少年ジャンプに連載されている森田まさのりの人気マンガを、前田憲作主演で映画化した、シリーズ第2弾。一昨年製作された前作は観ていないのですが、資料によれば監督は那須博之でした。今回は監督・脚本が『SCORE』の室賀厚にバトンタッチして、パワフルなアクションコメディに仕上がってます。

 この日は直前に國府田マリ子主演の『Looking For』が上映されていたのですが、僕はこの映画を1度観ているのでパスして、『ろくでなしBLUES'98』から観はじめました。場内がいつになくすごい人出だったのでびっくりしましたが、これは國府田マリ子のファンだったらしく、休憩時間中にあらかた姿を消してしまった。僕は『Looking For』より『ろくでなしBLUES'98』の方が面白いと思うけど、彼らは映画を面白さで観ているわけではないから、別に関係ないんでしょうね。今映画館で上映中の『新宿少年探偵団』なども、映画を「面白さ」で選ぶ人には信じられない作品だけど、それなりにお客は入っているみたいだもんね。こういう現象を見ると、映画は一種の「見世物興行」なんだということを、改めて実感してしまいます。

 物語は主人公たちが美人美術教師の「裸の個人授業」を期待して、にわか試験勉強をする前半と、主人公のガールフレンドの幼なじみが柴又からやってきて敵対する後半とに分かれます。前半のエピソードを後半への伏線にするあたり、この脚本はなかなか無駄がなくできている。美人美術教師が特別「美人」には見えないという欠点もありますが、これは台詞と芝居の面白さで押し通してしまう。前半はユーモラスな場面やギャグも多いし、何度か声を上げて笑ってしまうシーンがありました。

 この映画は暴力シーンの中にもユーモアやギャグが交じり、それが暴力の血生臭さや凄惨さを打ち消しています。スーパーの中での大乱闘は笑いなくして観られないし、乱闘中に投げ飛ばされた人間が、塀に人間型の穴を空けて向こう側に突き抜けるという、カトゥーンでしか観ることのできない古典的ギャグを堂々とやってくれます。これから大乱闘という場面で、細長い木箱の中から次々バットや鉄パイプを取り出すシーンも、アメリカのギャング映画で木箱からピストルや機関銃が出てくる場面の引用ですよね。こうした小さな描写が、この映画のスパイスになってます。緊迫したシーンでもついついニヤリとさせられて、すごく面白かった。唯一の例外は、主人公がトンネルの中で袋叩きにあい、恋人を連れ去られる場面です。できればこの場面も、何らかの工夫をして血の匂いを消してほしかった。

 最後の対決は、日本のアクション映画には珍しい「打撃系アクション」になっている。主人公の側はムエタイ(キックボクシング)、相手は空手の心得があるという設定。組み合った立ち回りより、画面が広くダイナミックに使えるので、これはスピード感があってなかなか見応えがあった。室賀監督の次回作に期待したい。


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