コレクター

1998/04/15 UIP試写室
モーガン・フリーマンが女子大生連続誘拐事件に迫る。
アシュレイ・ジャッドが好演してます。by K. Hattori



 モーガン・フリーマン演ずる主人公アレックス・クロスは、心理学者としての資格を持ち、何冊かの著書もあるベテラン刑事。パニック状態の犯人を説得する交渉役や、ショックを受けている被害者から話を聞くといった現場仕事はもちろん、犯人像の絞り切れていない事件を捜査して、証拠品から犯人像を類推して行くプロファイリングの仕事も行っている。『羊たちの沈黙』以降、映画やテレビドラマの中で大活躍のプロファイラですが、警察の中での立場は、この映画のアレックスのような人物が多いのかもしれません。どう考えても、警察の中でプロファイリング部門が成立するとは思えないもんね。これは刑事の個人技能の範疇でしょう。

 女子大生ばかりが連続して誘拐される事件が起き、主人公アレックスの姪も行方不明になる。森の中からは3人の犠牲者が遺体で見つかるが、アレックスは犯人をコレクターだと推理し、残る犠牲者たちは生きたまま監禁されているに違いないと考えた。警察をあざ笑うかのように、犯行を続ける犯人。病院の若い女医ケイト・マクティアナンも誘拐されるが、彼女は自力で犯人のもとから脱出する。手がかりがほとんどなかった捜査は、彼女の登場で急展開。犯人逮捕に向けて、少しずつ捜査の輪がせばまって行くのだが……。

 命からがら脱出に成功するケイトを演じているのは、『ノーマ・ジーンとマリリン』で主人公を演じていたアシュレイ・ジャッド。生きるか死ぬかの危険な目にあいながら、救出された直後から積極的に捜査に協力するヒロインも、この人が演じると説得力がある。最大の見どころは、彼女が犯人のもとから脱げ出し、森の中を走って逃げる場面。生い茂る草や木を押しのけ、草むらを踏み分け、つまずいて転び、斜面を転げ落ちながら、最後は滝つぼに向かってダイビング。少なくともこの一連の場面だけは、今までみたどんな映画よりもスピード感があったし、リアリティも感じられました。

 犯人を追いつめて行くミステリー・アクションとしては、謎解き部分にスリルがないのが欠点。捜査が動きはじめると、あとは次々と有力な手がかりが現れて、犯人はあっという間に正体を現す。この映画の中でユニークなアイデアは、遠距離にいる同じ趣味の犯罪者同士が、インターネットで情報を交換しているといる部分なのですが、それも1シーンだけ説明があって、あとはなしのつぶて。コンピュータのコの字も、メールのメの字も出てこなくなってしまう。あと、僕はてっきり犯人同士は一度も面識がなく、インターネットの中でたまたま自分の同類を見つけて意気投合したのだと思っていたのですが、そうでなかったのは残念でした。これなら別に、インターネットなんて出してくる必要もないのにね。

 モーガン・フリーマンは今までずっと「渋い脇役」として名を売ってきた人ですが、この映画では堂々たる1枚看板の主役。大スターとしての貫禄が漂って、じつにさまになってます。これだけでも観る価値はあるかな。

(原題:Kiss the girls)



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