追跡者

1998/04/07 丸の内ピカデリー2(試写会)
『逃亡者』のジェラード保安官を主人公にした続編。
役者はいいが、話に新鮮味がない。by K. Hattori



 ハリソン・フォード主演の『逃亡者』で、主人公を執拗に追いつめて行く姿が印象的だった連邦保安官ジェラード。『追跡者』は、そのジェラードを主人公にした新作映画だ。ジェラードを演じるのは、もちろん、トミー・リー・ジョーンズ。他にもジョー・パントリアーノ、ダニエル・ローバック、トム・ウッドなど、前作でもジェラードの腹心を演じた役者たちが勢揃いしている。こうしてかつてのキャストが一同に集まった時点で、この映画のもくろみは、8割がた成功しています。

 ただし、内容にはちょっとノレない。予告編を観ていたので、今回は逃亡犯がウェズリー・スナイプスだということだけは知っていた。僕はスナイプスが久しぶりに悪役をやるのだと早合点して、ちょっと喜んでしまったよ。以前彼が悪役をやった『デモリション・マン』は漫画だったけど、今回は本格アクション映画で、正統派の悪役をやるのだとばかり思っていた。スナイプスは悪役を演じても、絶対にチャーミングに演じられる俳優だと思うので、それだけで期待は高まったわけだ。ところが、映画を観たらスナイプスは良い子チャンじゃないか。元CIAの秘密工作員が陰謀に巻き込まれて逃亡し、ジェラードも彼を追ううちに陰謀に気づくなんて、話の筋まで『逃亡者』の焼き直しではないの?

 これはスリルが半減です。なぜ後半のぎりぎりの部分まで、スナイプス演じるシェリダンの立場を曖昧に見せておく工夫をしなかったんだろうか。序盤で早々にシェリダンの正体を明かし、彼が何らかの謀略に巻き込まれたことを観客と登場人物の大半に知らせてしまったのは、明らかに作劇上のミスだと思う。このネタバレ位置は、もっと後半にずらせます。脚本を書いているのは、これがデビュー作のジョン・ポーグ。経験不足なのはわかるけど、今回の脚本はサスペンス映画としては落第点だな。伏線やウリが強すぎて、後半になってから、先の展開が全部見えてしまうのは致命的です。

 今回、シェリダンの恋人マリー役に、『ふたりのベロニカ』のイレーヌ・ジャコブがキャスティングされています。劇中でも彼女はフランス訛りの英語で話し、捜査官たちに「知っていることを話さないと強制帰国させるぞ」と脅される。要するに、彼女が外国人であることを強調しているわけです。彼女が外国人であることは、物語の筋に直接関係ないんだけど、なぜわざわざこんなことをするのか、ハリウッド映画通にはすぐにピンと来るはずです。ハリウッドでは、いまだに黒人の男が白人の女性と寝ることがタブーになっている。実際には黒人と白人のカップルは多いのですが、映画の中では必ずと言っていいほど、黒人のヒーローは同じ黒人の恋人や妻をあてがわれているものです。これがハリウッドの見えざるルールです。でも、このルールやタブーは外国人には適応されない。そこで、今回はイレーヌ・ジャコブが登場したというわけでしょう……。

(原題:U. S. MARSHALS)



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