キングダムII

1998/04/07 松竹第1試写室
『奇跡の海』のラース・フォン・トリアーが描く大河ドラマ。
謎は謎を呼び、さらに続編に続くのだ!by K. Hattori



 待ちに待った、あの『キングダム』の続編です。監督は『奇跡の海』でカンヌ映画祭の審査員特別大賞を受賞したデンマークの奇才、ラース・フォン・トリアー。『キングダム』はビデオで2巻、時間にして4時間39分の大長編ですが、『キングダムII』はそれに輪をかけて長い4時間51分。今年は『タイタニック』だの『ハムレット』だの、長い映画が結構多い年ですが、この作品の長さを超えるものは滅多にないでしょう。途中に休憩が入りますが、観るにはそれなりの心構えが必要です。

 『キングダム』は、もともとデンマークのテレビで放送されたミニシリーズで、断続的に作られては小出しに放送されているらしい。内容はぜんぜん違うけど、日本で言えば『北の国から』みたいなもんか? 現在は、シリーズ完結編の『キングダムIII』を準備中で、最終的には全12時間のドラマになるらしい。これは「完結してから観よう」と思うとホネなので、やはり今から少しずつ観ておく方がいいと思う。まずはビデオ屋で『キングダム』を借りて、事件のあらましや登場人物について飲み込んでおくこと。その上で『キングダムII』を観て、あとはワクワクしながら、いつ登場するかわからない完結編を待つことにしましょう。

 『キングダム』を観た人なら、あの映画の中では多くの謎がそのままになっていたのが気になっているはずです。一番気になるのは、女医ユディットから生まれた父親と瓜ふたつの赤ん坊の正体と、その行く末でしょう。『キングダムII』では、この赤ん坊の成長を物語の縦糸にし、他のエピソードを横糸として織り込んで行く形になっています。赤ん坊を演じているのはウド・キアー。この人は、病院の創設者オーエ・クルーガー医師と、ユディットの元恋人オーエ、そして赤ん坊と、ひとり3役の大活躍ぶり。オーエとクルーガー医師はどうやら同一人物らしいので、メイクや扮装にも特に工夫はありませんが、赤ん坊はすごいです。『ガイバー』のマーク・ハミル状態と言っても、わかる人にしかわからないのですが、そう表現するのがもっともふさわしい。とにかく、すごく間抜け。そして、間抜けを知りつつ、役者は大真面目に演じてる。そのギャップのすごさ。

 前作『キングダム』では、スウェーデン人の医師ヘルマーと、若い医師クロウスホイの対立が物語の縦糸でした。今回はクロウスホイが少し後退し、変わりに前面に出てくるのが医師長メースゴーです。前作ではあまり目立たなかった彼が、今回はとことん自信を失い、病院内でどんどん影が薄くなるに連れて、物語の中では逆にどんどん存在感を大きくして行く。笑わせます。

 とにかく、語り出したら永久に止まらなくなる、奥の深〜い物語。しかもその先に、何ら思想的背景が見えないのがよろしい。出てくる医者も看護婦も、全員が変態で、全員が狂っているという、まさに裏『ER』状態。謎は新たな謎を生んで、物語は永久に止まらぬ循環を始める気配さえする。ああ、なんと楽しそうな展開!

(原題:THE KINGDOM II)



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