グラスハープ
草の竪琴

1998/03/20 シネセゾン試写室
1940年代を舞台にした老姉妹の愛憎と葛藤と和解の物語。
役者が超豪華。一見の価値はある。by K. Hattori



 原作が『ティファニーで朝食を』のトールマン・カポーティ。主演が『ターミネーター2』のエドワード・ファーロング。この2点を映画の売りにして宣伝をするようだが、これはピントがずれているし、何よりももったいなさすぎる。この作品は出演者もすごく豪華だし、内容的にも格調高い文芸作品なのに、こんな宣伝では安っぽい青春映画ぐらいにしか見えないではないか。公開は6月でまだ間があるのだから、配給会社は宣伝方法を考え直した方がいいと思う。

 エドワード・ファーロングが演じているのは、両親を早くに亡くし、親戚の家に預けられたコリン少年です。その家は年老いた姉妹と黒人料理番だけの女所帯。姉のドリーは少し頭が弱く、内気だが優しい性格。気の強い妹ヴェレーナは、多くの商店を切り盛りする女実業家。映画はこの姉妹の葛藤と和解、悲しい別れを軸に進行する。年老いた者たちが人生の幕を静かに下ろし、退場して行こうとする一方で、若者達は確実に成長してゆきます。老人と少年という定石通りの人物配置の他に、物語の中間部では、物語の進展に直接関係のないユニークな人物も数多く登場し、映画に広がりを与えています。

 この映画の出演者は以下のような人たちです。姉ドリー役にパイパー・ローリー、妹ヴェレーナ役にシシー・スペイセク、ドリーにプロポーズする老判事役にウォルター・マッソー、ヴェレーナが連れてくるシカゴの科学技術者にジャック・レモン、町を訪れる芸人一家の女主人にメアリー・スティーンバーゲン。他にも数々の映画でお馴染みの俳優たちが、ずらずら顔を出している。アカデミー賞俳優やノミネート経験俳優がこれだけそろっているのに、なぜエドワード・ファーロングを売りにするのか、僕には疑問ですけどね……。マッソーとレモンが共演しているというだけで、すごいことですよ。スペイセクとローリーは『キャリー』で母子を演じていた関係ですし、スペイセクとレモンは『ミッシング』で共演していた。この映画の監督・製作はチャールズ・マッソー。出演者のひとりでもある、ウォルター・マッソーのじつの息子です。これほどキャスティングについて語れる映画も、なかなかないと思うんだけどなぁ。

 1940年代の南部の田舎町が持つ、楽観的な雰囲気、家庭的な人間関係、開放的な風景などが、じつにうまく再現されています。家出した3人の老人達と2人の少年が、木の上の家で一緒に暮らすという「おとぎ話」のようなストーリーも、うまく消化している。映画に難点があるとすれば、エドワード・ファーロング扮する狂言回しのコリンに、もう少し活躍してほしかった。ショーン・パトリック・フラナリー扮する友人ライリーの方が、何倍も印象に残る位置にいるのは解せない。このあたりは脚本の問題だろう。成長したコリンと思われるナレーションがあれば、コリンの存在感が大きくなるわけではない。ちゃんとエピソードで肉付けしてほしかった。

(原題:The Grass Harp)



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