ユナイテッド・トラッシュ

1998/03/20 TCC試写室
思わず目を背けたくなる場面の連続に、試写室から出たくなった。
この何年かに観た映画中、最高に不快な映画。by K. Hattori



 『ドイツチェーンソー大量虐殺』と『テロ2000年/集中治療室』が日本でも封切られている、ドイツの映画監督クリストフ・シュリンゲンズィーフの最新作(だと思う)。僕は前記2本を観ていないので、この監督の作家としての指向や傾向がよくわからないまま映画を観てしまったのですが、これがとんでもなく不快でヘドが出そうな蛮作。下手だとか、センスがないとか、つまらないとか、品がないとか、下品だとか、そういうレベルをすべて下回る、観ているものをわざと不愉快にすることのみを目的としたような描写の数々。これを笑ってみられる人もいるのでしょうが、僕は駄目でした。

 物語の舞台はアフリカです。国連の治安部隊を指揮する総司令官の妻が赤ん坊を出産。両親は白人なのに、なぜかこの子供は黒人。じつは父親である司令官はホモのマゾヒストで、夜な夜なボーイフレンドにムチ打たれて歓喜の声を上げている。当然妻との間に性交渉はない。「子供の父親は誰か?」ということはお構いなしに物語は先に進み、亭主の不貞に苦しんだ司令官の妻は、アフリカ人に異端の宗教を教える神父と関係を持つようになる。セックスをしている神父が、クライマックスで「アーメン!」と叫ぶ痛烈なギャグがここで登場。赤ん坊は母親の不注意から鼻の穴に異物を詰め込んでしまい、パニックを起こした母親は編み棒で赤ん坊の頭部を串刺しにしてしまう。治療のため手術をしたのが、マッドサイエンティストがかった気狂い医者。医者は子供の頭部を巨大なペニスとワギナの混成物に造形してしまう。5才になった子供の頭は、おでこから頭のてっぺんまで女性器のような割れ目ができ、興奮するとそこから大量の精液が撒き散らされるようになっている。

 話もぐしゃぐしゃだけど、エピソードの細部はそれ以上に、徹底的にぐしゃぐしゃ。このふたつの「ぐしゃぐしゃ」は、同じ「ぐしゃぐしゃ」でも意味が違う。話が「ぐしゃぐしゃ」なのは、話の進展に一貫性がなく、蛇行し、ねじれ、幾度か座礁しかかりながら、御都合主義とゴリ押しで、あてもなく話を先に進めていく様子を指している。対して細部の「ぐしゃぐしゃ」は、ひとつひとつが観客の生理的嫌悪感をストレートに刺激し、目眩と吐き気を引き起こすものだ。この点に対し、この映画の作り手たちは迷いがない。

 クリストフ・シュリンゲンズィーフ監督の言によれば、この映画は現代のドイツ社会を風刺する目的が少なからずあるそうなのです。でもそんなもの、エピソードの強烈さを前にして、テーマなんてものは消し飛んでます。国連派遣軍総司令官に扮しているのはウド・キアー。普通の映画にも出ることが多い俳優ですが、シュリンゲンズィーフ監督作品の常連だそうです。この映画ではSMプレイに精を出したり、ジョセフィン・ベイカーばりのバナナダンスを踊ったりしてます。その妻を演じるキトゥン・ナティヴィダッドは、ラス・メイヤー監督の公私に渡るパートナーでもある世界的巨乳女優です。

(原題:United Trash)



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