ウルトラニャン2

1998/02/18 松竹第1試写室
仁侠映画のパロディ風に作られた前半は面白いが、
後半はぜんぜん納得できないぞ。by K. Hattori



 『ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ』と同時上映される、30分の短編アニメーション。昨年公開されたもののパート2ですが、物語としてはまったく独立しているので、ここから観始めても問題はないはず。現に僕は、前作の内容をすっかり忘れてます。今回は町内に縄張りを持つネコたちと、開発で森のねぐらを追われたカラスたちが壮絶なバトルを繰り広げ、その原因究明と仲裁に、ウルトラニャンが一役買うというお話。

 前半は古風な任侠映画のパロディみたいなところがあって、わりと楽しめました。平和を愛するネコの縄張りに、新興勢力のカラス一家が殴り込み。最初はカラスたちとの共存を口にしていたネコたちも、何がなんでもネコたちを追い出そうとするカラスたちの卑劣な手口に、対立と緊張はどんどん高まって行く。カラスの親分は血も涙もない極道ものだが、一家の中には、そんな親分のやり口に必ずしも心から賛同してはいないカラスもいて、ネコたちとの仲裁に乗り出す。だがそんな両者の良心的努力は卑劣なカラスたちの行為で踏みにじられ、ついに全面戦争が目前に迫ってくる……。

 仁侠映画のフォーマットにばっちりはまったストーリー展開と演出の呼吸に、にやにやしながら映画を観ていたんですが、物語は中盤から急激に失速し、陳腐なエンディングを迎えます。この物語の背景には、子供たちの塾通い、環境問題などが密接にからんでいるのですが、そうした要素は一切不問にしたまま物語はハッピーエンド。対立の解決策にしても「話し合えばきっとわかってくれる」とか、「魚を食べてアレルギーを治そう」「カルシウム光線、ビビビ!」とか、そういう問題で納まるとは思えない。解決が表面的なんだよな。結果だけうまく取り繕って、本質的な部分に誤魔化しがあると思うぞ。

 カラスたちがネコを嫌ったのは、確かに食品添加物が原因のアレルギーのせいかもしれない。でも、多数のカラスで組織的に弱いネコに危害を加えたり、仔ネコをさらって人質(ネコ質?)にするなどの狡猾さや邪悪さは、アレルギーのせいではあるまい。そこを不問にして、「悪いのはアレルギーだ。カラスは悪くない」という結論を出すのは、犯罪者の弁護士が「犯人が悪いのではない。悪いのは社会や、犯人をこのように育てた教育環境だ」と言うのと同じ。中学生が教師を廊下で刺し殺しても、老人から年金を奪おうとして蹴り殺しても、「悪いのは偏差値詰め込み教育と、子供にきちんとした倫理や道徳を教えられなかった大人たち。むしろ犯罪を犯した子供たちは被害者だ」と強弁するのに等しいよ。

 『ウルトラニャン2』は子供たちが観る映画です。だからこそ、こうしたごまかしは許し難い。カラスたちは、まず自分たちの行為を謝罪し、許しを請い、罰を受けるべきだ。その上で、ネコたちが事情を斟酌してそれを許すのが筋道ってものじゃないのか? この映画のハッピーエンドは、子供の教育上たいへんよろしくないと思うぞ。(なにムキになってんだろうね、僕は……。)


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