真夜中のサバナ

1998/02/10 ワーナー試写室
前回は途中で寝てしまったので今回は万全の体調で挑んだ。
でも印象がほとんど変わらないのはなぜ? by K. Hattori



 先日の完成披露試写では不覚にも寝込んでしまい、今回改めてワーナーの試写室で観直すことにした映画。今日はあらかじめ体調をととのえ、試写開始20分前にエスプレッソ・コーヒーを胃に流し込み、試写が始まってからはカフェインの錠剤を2錠も飲み下したのだが、それでも途中でウトウトする場面があったのはなぜだ! ひょっとしてこの映画はつまらないのか? つい先日まで「全国松竹東急洋画系で近日公開」だったのに、今日は「6月に恵比寿ガーデンシネマで公開」に変更されてたぞ! 興行筋からの評価が低いのか?

 今回改めて観て気付いたんですが、僕は前回かなり寝たと思ってましたが、実際はほとんど寝ずに、だいたい目を通していたようです。今回は上映時間2時間35分の内、少なくとも2時間30分ははっきりと目を覚ましていた自信がありますが、そのうち95%は前回観た記憶のある場面ばかりでした。だから、印象も前回とほとんど変わりません。

 違うのは、前回この映画を観た後『オスカー・ワイルド』と『ガタカ』を観て、ジュード・ローの名前と顔を覚えたことぐらいかな。彼はこの映画で、ケビン・スペイシー扮するジム・ウィリアムズの愛人で、彼に殺されるビリー・ハンソンという青年の役を演じています。前回はほとんど注目していなかったんですが、今回は最初から「あれがジュード・ローだ」と思って観てます。登場場面は少ないですが、注目していると、やはり印象に残る役者ですね。特に、ジムと記者が面談中に怒鳴り込み、ウイスキーのビンを叩き割って凄むところや、ラストシーンはすごいと思います。

 ジョン・キューザック扮する記者が、殺人事件の謎を究明して行くミステリーとしては、やや作りが大雑把で失敗していると思う。というより、そもそもこの映画は、謎解きミステリーとして作られていないような気さえする。脚本はちゃんとミステリーになっているのに、イーストウッドはミステリーとして演出してないんです。

 この映画を引っ張って行くのは、「その夜、ジム・ウィリアムズとビリー・ハンソンの間に何があったか」という謎解きではなく、黒人ドラッグ・クイーン、レディ・シャブリの強烈な個性です。彼女(?)は、この映画のモデルとなった事件にも関わった、実在の人物。しかも演じているのは本人。ホンモノの迫力を前にして、ケヴィン・スペイシーも、ジョン・キューザックも影が薄くなってしまう。この映画には彼女を筆頭にして、原作に登場した数々の名所や人物が登場する。イーストウッドは『マディソン郡の橋』でも、結局原作を絵解きして、原作読者にサービスしちゃう人ですから、今回も若干そんなサービスがあるんじゃなかろうか。

 映画の中には「紛れもなくイーストウッド演出」という場面がいくつもありますが、今回はやはり、サバナの町とジョニー・マーサーの曲とレディ・シャブリが主役で、その他は脇に回っているような気がするぞ。

(原題:MIDNIGHT IN THE GARDEN OF GOOD AND EVIL)



ホームページ
ホームページへ