ハイスクール・ハイ

1998/02/05 ソニー・ピクチャーズ試写室
古今の熱血教師映画をパロディにした映画だが、はっきり言って駄作。
脚本にドラマがないから、ギャグが軽くなる。by K. Hattori



 4月にビデオ発売される日本未公開作ですが、試写室でフィルムをかけるというので観てきました。製作と脚本は、『フライング・ハイ』『裸のガンを持つ男』シリーズのデビッド・ザッカー。監督は本作が2作目になる新鋭ハート・ボックナー。主演は『シティ・スリッカーズ2/黄金伝説を追え』で駄目な弟役として登場したジョン・ロビッツ。相手役として『トゥルーライズ』の女スパイ、ティア・カレルが出演しています。不良がたむろする問題校に赴任した教師が、持ち前のバイタリティと熱意で学校を改革して行くという、落ちこぼれ生徒と熱血教師の物語。この映画はそうした物語の枠組みを借りながら、全編にギャグをちりばめたパロディ作品。日本でも教育問題がいろいろ取りざたされてますが、言うまでもなく、そうした面ではまったく参考にならない映画です。残念ながらさっぱり面白くないので、これはビデオ直行便でも仕方ないのかもしれません。この手の映画って、アメリカ人には面白いんでしょうかね? 

 全編にギャグ満載なのですが、どれもこれも、表面的なクスグリに過ぎず、腹の底からは笑えません。この映画のギャグは、物語や登場人物の表面を外側から爪で引っかいたような物ばかり。物語が持つ本質的な部分から発生したギャグじゃないから、その場は不意打ちで笑わせられても、それが持続しない。同じストーリーでも、人物をもっと膨らませて行けば、今より10倍は面白い映画になったと思うんだけど、この映画は細かいギャグに熱心で、そうした本質は置き去りになっている。

 有名私学で教鞭をとるジョン・ロビッツは学長のひとり息子で、ゆくゆくは学校を相続する立場です。でも彼はその学校の中が居心地悪い。父親の庇護のもとで働くより、自分自身の力で教育の場に飛び込んでみたいと考えている。そこで彼は転属願いを出し、地域の底辺校であるバリー高校で働くことになる。ここで問題なのは、有名私学の教員時代の主人公が、まったくやる気のない無気力教師に見えること。生徒からは馬鹿にされまくってるし、学校の職員会(理事会かな)でも、まったく個人の意見を無視されている。その彼が、なぜ新任校ではやる気満々の熱血教師に変身するんだろう。親から独立して、ようやく本領発揮するチャンスに恵まれたからか、赴任校で出会った美人教師にいいところを見せたかったからか、それとも、彼はもともと熱血教師だったのに、何かの理由でやる気が失せていたのか……。

 ドラマとしての合理性を求めるなら、理由は最後のものにすべきだと思う。つまり、彼はもともと熱血タイプの教師だったんだけど、父親の存在もあって、前任校ではそれを発揮するチャンスがなかった。それが彼を窒息寸前の気分にさせている。学校を移ったことで、彼は水を得た魚のように生き生きと活動を始めるわけです。こうすると「環境が人を変える」というテーマが鮮明になって、生徒たちが変わって行く過程にも説得力が生れたと思う。今のままだと、取ってつけたようで……。

(原題:HIGH SCHOOL HIGH)



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