ナイスガイ

1998/01/26 東宝東和試写室
戦う料理人という設定は、ライバック・シリーズのパクリかい?
ジャッキー・チェンがオーストラリアで大活躍。by K. Hattori



 香港の大スター、ジャッキー・チェンが本格的な世界進出を目指して作った、初の全編英語映画。舞台はオーストラリア。テレビの料理番組で人気のジャッキーは、ギャングに追われる女を偶然助けたことから、彼女の一味と思われ、ギャングに追われることになる。彼女はギャング同士の抗争を取材しており、麻薬取引と殺人の現場を収録したビデオを持って逃げていたのだ。ところが逃げ回る際のドタバタで、ビデオはジャッキーの手に渡り、さらに友人の子供たちの手に渡る。ビデオを返却すれば済む話が、ビデオがないから話にならない。ギャングは執拗にジャッキーを追いかける。やがてギャングの魔の手は、彼の婚約者ミキにまで伸びてくる……。

 全編オーストラリアでのロケ撮影。アクションシーンの撮影には気心の知れたスタッフのチームワークが不可欠なので、組合の規定がうるさいアメリカを避けたのかもしれません。前作『レッド・ブロンクス』がアメリカで撮影してますから、同じ印象の絵面になるのを避けたのかもしれませんけど……。監督はジャッキーの盟友、サモ・ハン・キンポー。監督本人も映画の中にチョイ役で出演してます。個々のアクションシーンは、さすがにアイデア一杯。しかもスタントなしの本物ですから、観ていてヒヤヒヤするぐらい迫力満点。木工用の丸ノコの上でスタントをしたり、巨大なトラックのタイヤの下をくぐったり、一歩間違えれば命に関わるような場面の連続。ハリウッドならCGで合成しちゃうような危険な場面を、生身の人間が演じているんだから、やはりすごい。

 ただし、映画としてはあまり面白くないんだよね。まず人物配置が中途半端。ビデオを持って逃げる女を助けた主人公が事件に巻き込まれて行く話なら、普通は逃げる女と助けた男が恋仲になった方が自然です。この映画ではそれをせず、中国から来た主人公の婚約者を登場させてしまう。これではヒロインがふたりになって、物語の焦点がぼけてきます。さらによくわからないのは、そこに主人公のアシスタントの女性まで登場して、終盤は女3人に主人公ひとりというハーレム状態になること。これにはまったく納得できない。普通はアシスタントを男性にして、男女2名ずつのペアにするでしょ! そうすれば、そこからさらに小さなロマンスの話なども作れて、物語に厚味が出てくるだろうに。こんなの、娯楽映画のいろはです。少し頭を使えば問題点が一気に解決するんだから、その程度のことはしてもらいたい。さらに言えば、ギャングの女幹部が最後にちょっとした義侠心を見せますが、彼女の存在もすごく中途半端だったぞ。

 あと細かいことですが、ギャングたちの標的になっている問題のビデオが、とても同一アングルから撮ったものだとは思えず、非常に気になった。人物の顔をズームで寄って撮るのはいいとしても、カメラアングルを切り替えたり、編集してあるのはまずいよ。こういう物語の鍵になる小道具で、手抜きをしないでほしかった。とりあえず、次回作に期待しよう。それしかない。

(英語題:MR. NICE GUY)



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