女は女である

1998/01/21 ユニジャパン試写室
ミュージカル・ファンを完全におちょくったミュージカル風コメディ。
やっぱりゴダールは僕の体質に合わない。by K. Hattori



 ジャン=リュック・ゴダールが1961年にとったコメディ映画。最初「ゴダールの撮ったミュージカルだ」というような話を聞いて試写に行ったら、これがとんでもない大間違い。この映画って、ミュージカルが嫌いな人には痛快かもしれませんが、ミュージカルが大好きな僕にとっては拷問みたいな映画です。音楽担当はミシェル・ルグラン。『シェルブールの雨傘』や『ロシュフォールの恋人たち』で、ミュージカル・ファンにも名前を知られている大御所です。この映画には何曲かの歌が登場しますが、どれもメロディが美しくて、普通にミュージカル風の演出をすれば、さぞや楽しいシーンが出来上がっただろうというものばかり。ところが、この『女は女である』という映画は、徹底してミュージカル風の演出を拒絶するのです。

 音楽に合わせて人物の会話を構成したり、高まる感情に合わせて音楽が高まり、言葉が詩のように音楽とシンクロしてくるような場面はあるのですが、それが歌には決してならない。小さなナイトクラブで主人公が歌う場面も、イントロや間奏は聞こえてくるのに、歌が入ると伴奏は消えてアカペラになる。ミュージカルが好きな僕は、だんだん欲求不満になってきてしまいました。これじゃ蛇の生殺しです。オードブルだけのフルコース、序曲だけで永久に幕の開かないオペラ、前戯だけのセックスみたいなものです。ミュージカル映画なら、もうすぐにでも歌い出しているような場面で、平然とカットして次のシーンにつないで行くことの連続。これはゴダール、わかってやっている。さんざんミュージカル風に演出して観客の気をもませておき、じらし、はぐらかし、肩透しを食らわせて、にやにや笑っている。

 ここまでじらしたら、最後は盛大なプロダクションナンバーが入るに違いないと身構えていたのですが、そういう気配もまったくありませんでした。映画は最後まで、ミュージカル場面らしい部分を持たぬままに終わるのです。あ〜、つまんないの。

 この映画、内容ももう少しわかりにくかった。同棲しているカップルがいて、女性の方はどうしても赤ちゃんがほしくてたまらない。排卵周期を調べて、あと24時間以内にセックスすれば妊娠すると知った彼女は、恋人に猛然とアタック。でも子供の欲しくない彼はつれない返事。「そんなに子供が欲しいなら、誰か別の男に抱いてもらえ!」ということになって、彼女は彼の友だちと寝ることになる……。ん〜、なんでこうなるんだ?

 僕は主人公の恋人が、なぜ彼女と結婚したくないのか、なぜ子供を欲しがらないのかという、明確な理由がわからなかった。同時に、なぜ彼女がそれほど子供を欲しがるのかという理由もわからなかった。もっと言えば、「子供が欲しければ、他の男と寝ろ」という気持ちもわからない。このあたりは、もう完全にデタラメもいいところです。それでも話に勢いがあるから、何となく最後まで観てしまうんですけどね……。

(原題:Une Femme est Une Femme)



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