エイリアン4

1998/01/19 よみうりホール
(完成披露試写会)
前作で最後のエイリアンと共に死んだはずのリプリーがなぜ復活したの?
じつはそれこそが、今回の映画のテーマなのです。by K. Hattori



 『エイリアン3』でデビッド・フィンチャーを再起不能寸前にまで叩き込む失敗をしておきながら、それでも懲りずに作るか4作目! もういい加減にしろ! シガニー・ウィーバーも、律義に全作品出るなよな……。半ばそう思いながら観た作品ですが、これが意外や意外、それなりに面白いのです。このシリーズは1作目以来、少しずつエイリアンの性質に新たなディテールを付け加え、より恐ろしい生物へと進化させていますが、それもとりあえずここまでかな。当面の「最終進化形」という姿が、この4作目では拝めます。ここから推測する限り、このシリーズで5作目を作ることはないのではないでしょうか。ひょっとしたら、『プレデター』シリーズのように、コンセプトや登場キャラクターを変えてシリーズの続編かサイドストーリーを作ることが可能かもしれませんが、それでは今までのシリーズのファンが付いて行かないような気もしますしね……。少なくとも僕の中で、このシリーズは完結しました。

 今回の監督は『デリカテッセン』『ロスト・チルドレン』のジャン・ピエール・ジュネ。ハリウッド進出第1作で、しかもシリーズものという悪条件にもめげず、随所に自分の個性を出している。ジュネ監督の賢いところは、ハリウッド行きに浮かれてハダカでフランスを飛び出さず、ちゃんと頼りになるスタッフを連れてアメリカに渡ったところです。今回は『エイリアン』シリーズという特異なビジュアル世界があるので、美術のマルク・キャロはフランスで待機。かわりに撮影のダリアス・コンジと、編集のハーヴ・シナイドは、前2作から引き続きジュネ監督と組むことになりました。役者の方でも、ドミニク・ピノンとロン・パールマンが、ジュネ監督作常連の役者として顔を出している。ここまで顔ぶれが揃うと、嫌でも監督の色が出てくるはずだよね。

 今回はウィノナ・ライダーの出演が大きな話題になっていましたが、僕はむしろ、マイケル・ウィンコットの出演に注目していた。彼は密輸船の船長として、個性的なアウトローたちを束ねて行く役どころ。何しろ、密輸船の他の乗組員には、ロン・パールマンもいれば、ドミニク・ピノンもいれば、ウィノナ・ライダーもいるわけです。まだ他にも、クセのありそうな連中が何人かいる。それをガッチリ押さえつけて、ひとつのチームにまとめ上げていられるのは、やっぱりマイケル・ウィンコットのような船長がいるからなのですね。何となく納得。

 今回の映画は、1作目のようなサスペンスや、2作目のような活劇を求めると失望するかもしれません。といって、つまらない映画では決してない。今までの映画がエイリアンという敵を人間の外側に置いていたのに対し、今回は主人公の内なる戦いがテーマになっている。今回の映画は、主人公リプリーが自分自身のアイデンティティを獲得するために戦う物語なのです。こうした「内なる戦い」を回りくどいメタファーではなく、直接的に肉体で表現してしまうのがハリウッド流なのですが……。


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