NY検事局

1997/09/19 GAGA試写室
アンディ・ガルシア扮する若い地方検事が警察腐敗を暴く。
リチャード・ドレイファスの扱いが中途半端。by K. Hattori



 アンディ・ガルシア演ずる新人検事補が、警官である父親の関わった麻薬ディーラーの裁判を通じて頭角を現わし、人間的にも成長して行く物語。ポッと出の真面目な検事補が、地方検事の人気取りという政治判断から大事件をまかされ、地方検事の病気引退から後継者として名指しされて地方検事の座にまで上り詰めるという展開に、どの程度のリアリティがあるんだろう。お話としては面白いんだけど、このエピソードに限らず、映画の中にいろんな要素を詰め込みすぎて、どれも未消化になっているような印象が残ります。監督がベテランのシドニー・ルメットだから、この内容でも破綻なく仕上げているんだけど、これで上映時間が1時間53分はつらい。せめてあと30分あれば、もっとお芝居をたっぷり見せる余裕が出てきたと思う。

 主演のアンディ・ガルシアと父親役のイアン・ホルムだけでは映画が持たないと判断されたのかもしれないけど、序盤の裁判で主人公と対決する弁護士役にリチャード・ドレイファスを持ってきたのはバランスが悪い。この役は物語に最後までからむんではなくて、本当に脇の人物なんだよね。脇に大物俳優を持ってきて映画に厚味を出すのが目的なら、ドレイファスの人間的な側面の吐露はもっと終盤に持ってこなければならない。この映画におけるドレイファスの役目は、主人公とサシで話をするサウナの場面で終わってしまっている。これは余りにもったいなさ過ぎる。ドレイファスの目的はもう少し隠しておいて、謎めいた存在にしておいた方がいい。そうした方が、逮捕状を巡るエピソードでレナ・オリンが上司であるドレイファスに真相を話すか否かというサスペンスが盛り上がってくる。

 ドレイファス扮するサム・ビゴダ弁護士は、金のためならどんな悪党の弁護でも引き受ける節操の無さと、法廷での駆け引きに長けたらつ腕ぶりでその名を知られた人物です。ビゴダは正義派の主人公とは対照的な人物であり、あわよくば主人公の失脚を望んでいる人物のように見えなくてはならない。その方が、映画の最後まで緊張感が持続したはずです。それが最後にひっくり返ると、苦いハッピーエンドにユーモアが出たと思うんだけどな。

 映画は前半の麻薬ディーラー裁判と、後半の警察内部調査のパートに分割され、両者に有機的なつながりが見出しにくい。主人公のキャラクター描写も、アンディ・ガルシアという役者の持つ力に委ねられていて、エピソードの積み上げが薄いような気がします。その上でレナ・オリンとの恋愛話などに時間が割かれたため、ますます各エピソード同士で上映時間の取り合いが苛烈になる。この内容なら、主人公と父親との関係、検事局内部での権力闘争、警察内部の腐敗など、エピソードをいくつかに限定してしまうべきではないだろうか。ハリウッド製娯楽映画にヒロインの存在が不可欠なのは理解できるけど、レナ・オリンがいてもいなくても、この映画の大勢にはまったく影響がないんじゃないだろうか。


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