ボルケーノ

1997/08/29 20世紀フォックス試写室
火山噴火の大迫力の前には、どんな理屈もあら探しも消し飛ぶ。
取って付けたような人間ドラマもなかなか上手い。by K. Hattori



 地震学者のエミー・バーンズを演じているAnne Hecheの名前は、どう読むのが正しいのでしょうか。この映画のプレスシートでは「アン・ヘイチ」になってますが、10月下旬公開予定の『フェイク』のプレスシートでは「アン・ヘッシュ」になってますし、『ワイルド・サイド』の時は「アン・ヘッチ」になってます。『陪審員』や『ミルク・マネー』の資料はちょっと持ってませんが、どうせバラバラでしょう。欧米人の人名をカタカナで表記するのは難しいのですが、無理を承知で、どこかで誰かが本人に問いただして確認する必要がある。そうやって、ロナルド・リーガンは「レーガン大統領」になり、スティーブン・セーガルは「スティーブン・セガール」になったのです。映画会社の人は、Anne Hecheに会う機会があったら「あなたの名前はヘイチですか、ヘッシュですか、ヘッチですか?」と聞いておいてください。僕はこの女優がわりと好きなので、どう呼ぶのが正しいのかはとても気になります。

 さて、映画の話に戻ります。『ボルケーノ』は、『デイライト』『ダンテズピーク』など、近年ハリウッドで再ブームになりつつある災害パニック映画の中の1本です。隣接ジャンルに「航空パニック」というのもあって、こちらもブーム。『乱気流/タービュランス』『コン・エアー』『エアフォース・ワン』などなど。今後も船が沈没するだの、町が大洪水になるだの、いろんな映画が日本に来ると思います。僕はこの手の映画が嫌いじゃないです。こうした映画には、特撮を駆使した見世物小屋的興奮と、事件に巻き込まれた人たちの織り成すドラマがある。両方のバランスがいいと「いい映画」ってことになるんだと思います。そういう意味で、この『ボルケーノ』はかなりポイントの高い映画です。『ボディガード』で生ぬるいドラマを作ったミック・ジャクソン監督ですが、今回の映画はすごくいい。

 『VOLCANO』というのは直訳すれば「火山」という意味。横文字タイトルの是非が喧伝されていますが、邦題が『火山』じゃ誰も観に行かないよ〜。これは『ボルケーノ』で正解。ロサンゼルスのど真ん中である日突然火山が爆発し、地面がぱっくり割れてマグマがどくんどくん吹き出してくるという映画です。そんなことが科学的にあり得るか? そんなことは、大通りをマグマがぬらぬらと這い回るど迫力映像の前に消し飛んでしまうのです。とにかく映像の迫力は最高。たった1日で火山活動が収まるか? いいんだよそんなことは。

 災害パニック映画につきものの人間ドラマもそつがない。父親に甘ったれていた娘は成長し、人種的偏見を持っていた警官は黒人の青年と和解し、医者を辞めようかと悩んでいた女医は自分の人生に目覚め、己の失策から乗客乗員を危険にさらした地下鉄重役は我が身を犠牲にして乗員を助ける。生きるべき人は生き延び、死ぬべき人は躊躇なく、しかも感動的に殺す脚本の妙。最後は小さい男の子の台詞に、観ているこちらが感動してちょっと泣いちまったい! 脚本家はこれがデビュー作だそうな。それが一番すごかったりして。


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