コンタクト

1997/08/01 ワーナー試写室
ジョディ・フォスター主演で描く、地球人と異星人のファーストコンタクト。
監督はロバート・ゼメギス。原作はカール・セーガン。by K. Hattori



 10数年前のテレビ番組「コスモス」で一世を風靡し、「核の冬」理論などでも知られる科学者カール・セーガンの執筆したベストセラー小説を、『バック・トゥー・ザ・フューチャー』シリーズや『フォレスト・ガンプ/一期一会』のロバート・ゼメギス監督が映画化。主演はジョディ・フォスター。これってアカデミー賞監督とオスカー女優の組み合わせですね。比較的地味な映画なのに、これだけ大きな予算を投入できたのは、この顔ぶれによるところが大きいのでしょう。

 宇宙からの電波を丹念に分析し、地球外生命体の可能性を探っている女性科学者が主人公。雑音をかき分けながら、待つこと数10年。ついに地球外から交信電波と思われるものをキャッチする。これぞ地球以外にも知的生命体が存在する証拠だと、にわかに色めき立つ主人公たち。これと同じ素材を、頭の悪そうなチャーリー・シーン主演で描くとB級SF映画『アライバル/侵略者』になるのですが、『コンタクト』は頭のよさそうなジョディ・フォスター主演の大作映画。そんな間抜けな展開にはならない。映画はここから異星人探しという夢を追うことを一時中断し、政治的なシミュレーションの様相を見せはじめる。

 2時間半の上映時間ですが、中盤まではほとんど物語が動いて行きません。政治的な駆け引きの中で、主人公がどんどん周辺に押しやられてしまう様子は歯がゆいばかり。研究予算のカットと、スポンサー探し。部下の仕事を散々妨害していたくせに、そこで一定の結果が出ると成果を横取りする嫌な上役との確執など、ほとんどSFとは関係のない生活味あふれるエピソードの数々で、序盤から中盤まで、延々物語を引っ張ります。宇宙からの電波が届いた瞬間の興奮なども描かれていますが、これも必要最低限に淡々と描かれている。ここでお祭り騒ぎにして、主人公に脚光を浴びさせることを避けるための計算なのですが、それは後からわかること。観ている時は煮え切らず、いつまでたってもはじけない物語に軽いいらだちすら感じました。

 主人公がいよいよ宇宙に旅立つ場面は、なかなか見せてくれます。『2001年宇宙の旅』さながらの映像の奔流の果てに、主人公は今までに見たこともない美しい風景を見る。この「絵にも描けない美しさ」を、ジョディ・フォスターの表情だけで語らせたのは上手い。「科学者でなく詩人を連れてくるべきだった」と彼女がつぶやく場面で見せる表情の豊かさは特筆もの。僕がこの映画の中で一番感動したのは、じつはこのジョディ・フォスターの表情だったのです。

 映画のテーマとしては、『未知との遭遇』と同じだと思いました。UFOが宇宙からの電波になっているのが、スピルバーグとカール・セーガンの違いなのでしょう。すべてを捨てて宇宙に旅立って行くのが、男性ではなく女性だという点も、今風なのかもしれません。フォスターの役を男性にしたら、ひどい物語になりそうです。


ホームページ
ホームページへ