スレイヤーズぐれえと

1997/07/31 東映試写室
プログラム・ピクチャー的なアニメ映画ですが、これが面白い。
主人公たちの馬鹿ぶりが芸になっている。by K. Hattori



 劇場で予告編を観ることはあっても、まず観に行くことはなかったアニメ・シリーズですが、これが面白いのなんのって……。映画としてはシリーズ第3弾らしいのですが、同じ主人公たちが活躍するアニメは、テレビでも放映しているんですよね。僕はテレビ・映画含めて、今回観たのが初めてだったんですが、大いに楽しませてもらいました。これだけサービス精神旺盛で楽しめる映画って、なかなかないですよ。観客を楽しませてナンボ、笑わせてナンボという、完全に商売に徹してるすがすがしさ。日本ではヘンにオリジナルを目指して力んでいる映画より、アニメの方がよほどエンターテインメントしているんですね。作画のレベルもなかなか高くて驚きました。先日観た『ジャングル大帝』の数段上です。内容はビジュアルも含めて完全に「オタク向け」を思わせるのですが、これだけ笑わせてくれるんだから、どこかに普遍性があるのでしょう。

 主人公は美少女魔道士リナ=インバースと、そのライバルである白蛇(サーペント)のナーガ。このふたりのキャラクターが完全に出来上がっていて、能天気なシチュエーション・コメディの型にはめやすい。今回ふたりが訪れたのは、二大勢力が町の支配権をかけてにらみ合うストーナーの町。この背景説明を見た瞬間、僕は「なるほど『用心棒』をやるつもりだな」と考えた。でもこれは早合点でした。この映画の主人公たちは、ふたりの城主のいがみ合いを利用して待ちから危険勢力を一掃しようと考えるほどには、頭がよくなかったのです。互いに意地を張り合ったふたりは率先して仲違いし、敵対する城主たちにそれぞれ取り込まれてしまう。

 城主たちに利用されるのは、ふたりの魔道士だけではない。町一番のゴーレム職人ガリアと、そのひとり息子ヒューイも、城主たちにそれぞれ取り込まれる。じつは城主たちは職人に巨大なゴーレムを量産させ、それを戦争に利用することで国全体を支配しようという野望を持っていたのです。ここで登場するイメージ映像が、まるっきり『風の谷のナウシカ』の巨神兵だというのが笑わせます。そんな城主たちの野望も知らず、国王は彼らにゴーレムを使った勝負を提案するのですが、ゴーレムを動かすには強力な魔力が必要になる。それぞれのゴーレムに埋め込まれたレナとナーガが、巨大なゴーレム同士の戦いを繰り広げるあたりは、巨大ロボットアニメのパロディでしょう。とにかく徹底的に馬鹿馬鹿しくて面白い。アニメでこんなに笑ったのは久しぶりです。

 描かれている世界の設定や、主人公たちのこれまでのエピソードなどを知らなくても、十分に楽しめる内容。話は単純だし、そもそもが下らなくて馬鹿な内容なんだけど、ギャグは表層に流れず、結構手が込んでいて笑わせます。同じマンガ映画でも、『バットマン&ロビン』の数十分の1の予算で作り、数十倍笑わせてくれるんだから、やっぱりできのいいアニメ映画ってのはコストパフォーマンスが高い娯楽なんですね。


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