ときめきメモリアル

1997/07/23 東映試写室
こんな映画でも全国配給されるのがブロックブッキングの弊害。
地方で選択の余地なくこれを観る人が気の毒。by K. Hattori



 同名の人気ゲームソフトを下敷きに、岡田惠和がオリジナル脚本を書いた。監督は『ぼくらの七日間戦争』の菅原浩志。僕は原作とも言うべきゲームの方を知らないので、それとの比較ではコメントできないけれど、ゲームと同じキャラクターは藤崎詩織という女の子ひとりだけで、しかもゲスト的な扱い。タイトルだけは同じで、ほとんどオリジナルなものと考えていいのでしょう。

 企画優先のキワモノ的な映画ですが、ひょっとしたら青春ドラマの佳作ぐらいにはなっているかと期待してたんですけどね……。はっきり言って、これはまず脚本が駄目です。役者の芝居や演出以前に、物語の焦点がどこにあるのか不明確すぎる。物語はありきたりなエピソードの積み重ねなんですが、その中で、どこに一番重点を置いているのかがわからない。結局どれもが中途半端になって、観終わった後に何も残らなくなってしまう。中心になるエピソードを2つぐらいに絞り込めば、物語はもっとすっきりとまとまり力強さも出たはずです。

 例えば語り手である明彦の気持ちを中心にまとめるか、仲間の死という心の傷を乗り越えてゆく若者たちの話を中心にまとめるかで、映画全体のトーンは決定されたはず。こうした深刻なテーマを出さなくても、女の子の可愛さや、最後の夏休みに体験する恋の予感でも、テーマは何でもいい。エピソードをテーマに応じて少しずつ束ねていけば、今より3倍は面白い映画になったはずです。それができないまま作られた映画は、小さなエピソードが雑多に詰め込まれているだけ。アイデアの箇条書きをそのまま脚本にしたような筋立てです。

 話が練りきれていないから、珍妙な芝居をつけて面白がらせようという魂胆が見え見えで、下品な描写が多い。僕は映画の導入部から中盤まで、観ていて不愉快な場面が多かった。そもそも主人公である明彦という男が、他のバイト仲間から露骨に排斥される様子が気持ち悪い。邪魔者あつかいされても、女の子たちの顔を見てヘラヘラ笑っているのがもっと気持ち悪い。醤油屋の息子の浩介はもっと骨のある奴かと思っていたら、これも中途半端につっぱってるだけ。女の子たちも全員性格が破綻している。単純に「こいつはいい奴だ」と好感が持てる人物がひとりもいないなんて、すごく珍しい映画です。

 若い女の子が大勢出てくる映画なのに、どの子もあまりきれいに撮れていないのはなぜだろう。最初の更衣室の場面なども、女子高校生の着替えを撮っているのに、エロティシズムがまったく感じられないパサパサした映像だったし……。ここ一番というところで、登場人物それぞれにきちんと見せ場を作ってあげることが必要だと思うんですが、肝心なところになるとカメラが大きく後退してしまうから、人物の表情がまるで生きてこない。

 登場人物たちが幼すぎる。高校3年生なら、他にやることあるだろう。『いちご同盟』の中学3年生の方が、もっと人生に真剣に向き合ってたし、大人に見えたぞ。原作がゲームとはいえ、映画が「青春ごっこ」では困る。


ホームページ
ホームページへ