恋におぼれて

1997/07/23 ワーナー映画試写室
メグ・ライアンとマシュー・ブロデリック主演のラブコメディ。
チェキー・カーヨーがいい味出してます。by K. Hattori



 メグ・ライアンとマシュー・ブロデリック主演のラブ・コメディ。「ライアンの相手役にブロデリックじゃ貫禄負けするに違いない」と予想したのですが、この予想は大当たりでもあり、大外れでもありました。ブロデリックの役は、田舎町の天文台で働く純朴な青年。ケリー・プレストン演ずる幼なじみの恋人は、同じ町で学校の先生をしている。その恋人が、教員研修に出かけたニューヨークで新しい恋人を作って、ブロデリックに別れの手紙を寄越す。「僕の本当の愛で、彼女を取り戻してみせる」と意気込んでニューヨーク入りしたブロデリックは、自分の(元)恋人と同棲するレストラン・オーナーの元婚約者メグ・ライアンと知り合い、二人の仲を引き裂こうと画策するわけです。

 自分を振った婚約者を追いかけて行くブロデリックの役回りは、『フレンチ・キス』でメグ・ライアンが演じた役のバリエーション。『フレンチ・キス』ではケヴィン・クラインにリードされていたライアンが、今度はブロデリックをリードして行きます。共通の利害で結ばれた戦友とも言えるライアンとブロデリックが、ふとしたはずみでセックスしてしまうという展開は、ライアンの出世作『恋人たちの予感』を思い出させました。いろんな意味でこの映画は、ロマコメの女王メグ・ライアンの集大成。自分を捨てた男に残酷な復讐をするという、一歩間違えるとすごく嫌な女になりそうな役どころを、うまくかわしてキュートな女性像に仕上げてます。

 配役のイメージそのままに、ライアンとブロデリックが並ぶと、最初はブロデリックがずいぶんと格下に見える。ブロデリックは田舎出の純情なオノボリさんで、ライアンは都会の生活で叩き上げられたタフな女です。二人が奇妙な共同作戦を進める内に、互いの長所や短所を共有しながら新しい関係を作って行くことになる。後ろ向きでネガティブな情熱に夢中になっている内に、それぞれが自分自身の短所や醜さに気付き、それを克服して新しい恋を見つめられるようになる。ロマコメやラブコメなんて、主人公たちが結ばれるまでに無理なくどれだけ遠回りをさせるかがポイントですから、この映画はその点でうまく成功していると思います。

 ブロデリックの恋人を奪うライアンの元婚約者を演じるのは、フランスの俳優チェキー・カーヨー。『ニキータ』で鬼教官を演じていた役者ですが、最近はアメリカ映画にも進出して、『バッドボーイズ』で悪役を演じたりしてました。今回はフランスからアメリカに渡ってきたレストラン・オーナーという役ですが、単なる憎まれ役ではなく、強さと弱さを併せ持つ、渋くて魅力的な中年男を情感たっぷりに演じてます。レストランに皿洗いとして潜り込んだブロデリックとの会話シーンや、厨房の中でスタッフに向って自分の哲学を語るシーンなどは格好いいし、店にグルメ評論家を迎える場面は抱腹絶倒。堕ちるところまで堕ちたところで、涙ながらに恋人の名を絶叫する場面は、おかしくて、ちょっと哀れでした。


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