学校の怪談3

1997/07/05 千代田区公会堂(試写会)
監督が金子修介と聞いて期待したんだけど、予想していた映画と違うなぁ。
夏の定番になりつつある人気シリーズの第3弾。by K. Hattori



 東宝の夏休み映画としてすっかり定着した人気シリーズの第3弾は、『ガメラ/大怪獣空中決戦』や『ガメラ2/レギオン襲来』で世の怪獣ファンを歓喜の涙にむせび泣かせた金子修介が監督することになった。金子監督には和製ドラキュラを扱ったコメディ映画『咬みつきたい』という怪作もある。『1999年の夏休み』という、学校を舞台にしたファンタジックな映画も撮っている。今回の映画のコピーは「3番目が1番こわい。」だが、その宣伝文句に値する傑作が出来るだろうと期待していたのだ。ああ、期待はしばしば裏切られる……。

 神戸の事件の影響もあり、「これも上映が危ういのでは」と一部で噂されていた映画ですが、これで駄目なら世の中の大よそありとあらゆる表現が駄目でしょう。「首を切るぞ!」などという、時節柄物騒な台詞もないわけではありませんが、これを恐いと感じる以前に僕は笑ってしまいました。だって恐くないんだもん。観ていて多少ドキドキはしますけど、本格的に恐くなる一歩も二歩も手前で描写をストップさせているのは、やっぱり「マイルドなホラー」なんだよね。今回は一般試写も兼ねる会場だったせいで、子供の姿もたくさん見えましたけど、映画の最中にそうした客からの反応があまり聞こえてこないのは気になる。映画のターゲットになっている子供たち自身は、この映画を楽しんでいるのだろうか。

 不思議なできごととの出会いを通して成長して行く主人公を描くのがファンタジーの基本だと思うのですが、この映画では誰がどう成長したんだか……。子供たちは皆それぞれの人生と格闘して成長して行くけれど、大人たちはどうなんだろう。『ひみつの花園』の西田尚美が演じた八橋先生は、どこが未熟で、それをどう克服したのか。黒木瞳扮する母親や佐戸井けん太扮する父親は、子供たちの成長ぶりをどう受け止めるのだろうか。このあたりをもう少し書き込んでくれると、大人の鑑賞にもたえる映画に仕上がったと思うのだけれど……。現状では、子供にせかされて映画館までついてきた親が気の毒かもしれない。こうした子供が主人公の映画は、「子供向き」の話や描写にするだけでなく、それを強制的に観させられる大人にも配慮した作りにしてもらいたい。

 アメリカ映画を観ていると子役の層の厚さに驚くことがありますが、この映画を観ていると「日本にも子役はちゃんといるじゃん」と思いました。ただそれがきちんと活かされる企画がないのでしょう。この映画では、ふがいない大人たちに比べて、子供たちの方がよほど生き生きしてます。中でも茜を演じた米澤史織と、彼女に愛を告白する真琴役の山田一統の掛け合いはのびのびしていて楽しい。教室の中で押しつぶされそうになりながら、「もう茜のことしか考えられない!」と叫ぶ少年の姿は、不格好ではあるけれど精一杯ヒロイックで感動的。

 クライマックスの学校崩壊場面では、スピルバーグの『ロスト・ワールド』もかくやという恐竜の大暴れが用意されていて、これだけは観ていても楽しいです。


ホームページ
ホームページへ