スピード2

1997/06/26 よみうりホール(試写会)
キアヌ・リーブスの降板で物語が中途半端になったことには同情するが、
前作にまるで及ばないパート2映画の典型だ。by K. Hattori



 キアヌ・リーブスの主演で大ヒットしたヤン・デ・ボンのサスペンス・アクション映画『スピード』の続編。リーブスが降板したことで、前作のヒロイン、サンドラ・ブロックの相手役は『スリーパーズ』のジェイソン・パトリックに交代した。前作でリーブスが演じた役をパトリックに演じさせるのかと思って、「久しぶりにずうずうしいキャスティングの映画だな」と感心していたのですがさにあらず。「非常事態の中で芽生えた恋は長続きしない」という言葉通り、ブロック演ずるアニーとリーブス扮するジャックは別れてしまったのです。うまいこと考えたもんです。一応辻褄は合っている。でも、これだけで前作のファンは、ひどく裏切られた気持ちになったと思うけどなぁ。『スピード』のラストで抱き合って互いの無事を喜び合った二人の恋は、事件のハラハラドキドキを恋だと勘違いしていただけだったわけ?

 序盤がこれでいきなり興醒めしてしまい、その後も物語にいまひとつ乗れませんでした。そもそも今回の脚本は、いろんなことを詰め込みすぎのようにも思えます。前作の良さは「単機能脚本の良さ」だったと僕は思っているんです。基本的に第1の目的は「バスを止めること」だけで、それ以外はすべて優先順位の低いものだった。それに比べると、今回の映画はその場その場で何が問題なのかがわかりにくい。豪華客船が止まらなくなる、という事態はすぐに飲み込めるのですが、それによって引き起こされる危険は映画の最後の方に用意されているだけ。バスが暴走する前作だと、道路上の障害物をたくさん用意して、暴走そのものの危険性をたくさんアピールできたんですが、船の場合それはまったくない。

 結局やっていることは、外部に連絡がつかず、脱出することも不可能な密室と化した船の中で、主人公たちが犯人を追ってあっちにウロウロ、こっちにウロウロするだけ。これじゃ『スピード』じゃなくて『ダイ・ハード』でしょ。『ダイ・ハード』に比べると登場する火器の数が圧倒的に不足していて地味。敵役も冷酷非常なテロリストじゃなくてコンピュータハッカーだから、敵と味方がバンバン撃ち合うような場面が作れない。これじゃ今回敵役として登場したウィレム・デフォーも気の毒。

 前作ではキアヌ・リーブス扮する警官が主人公で、サンドラ・ブロック扮するヒロインも、デニス・ホッパー扮する犯人も、全部「脇役」だった。主人公が対決しているのは「バスの暴走」という事態そのもので、あとは副次的な出来事だという割りきりがあった。今回は主役交代の影響もあって、主人公はサンドラ・ブロックとジェイソン・パトリックのふたり。船の暴走に迫力がないので、ウィレム・デフォーを不必要に動かしたり、他の乗員乗客のエピソードを絡ませたりしている。これらはすべて物語を水ぶくれさせ、前作の切れの良さは失われた。

 危機また危機の連続は、それが「切れ目なく続く」ことが大切。この映画はエピソードが細切れで、興奮が積み重なって大きくなって行くことがない。凡打です。


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