008<ゼロゼロパー>
皇帝ミッション

1997/05/31 銀座テアトル西友
次々繰り出されるナンセンスなギャグの数々に腹を抱えて大笑いできる。
現代香港映画の喜劇王チャウ・シンチーが大活躍。by K. Hattori



 『マッドモンク/魔界ドラゴンファイター』が面白かったので、同じチャウ・シンチー主演映画ということで楽しみにしてました。映画はこちらの期待を裏切らない、ギャグ満載の仕上がり。何がなんでも客を笑わせようというサービス精神に応え、大いに笑わせてもらいました。アメリカのコメディ映画だと、ギャグの合間に涙を入れてきたりするんですが、この映画にはそうしたウェットな部分がほとんどない。(少しはある。)徹底的に馬鹿をやって無理矢理笑わせるやりかたは決してスマートではないけれど、そもそもコメディ映画なんて笑うために映画館に足を運んでいるんですから、笑わなきゃ損だよね。脇腹に手を突っ込んでくすぐるような、強制的に笑わせるシステムとしての映画も、たまにはいいもんです。

 「007」シリーズのパロディという体裁らしいのですが、オープニングタイトル以外は「どこが007なんだよ!」と言うような内容。だって時代劇なんだもん。でもそんなことは、この際どうでもいい。面白いんだから文句はありません。皇帝の身を守る凄腕の警護係の中で、ただひとり落ちこぼれた主人公が、奇妙な発明品と持ち前のバイタリティ、妻の愛情に支えられて大活躍する物語です。隣国の陰謀から皇帝を守り、一度は馘首になった警護係の職に復帰し、皇帝の信任を得て新たな仕事に挑んで行く様子は痛快です。話としてはこれだけだから、これ以上この映画の面白さについて語ろうとすれば、それは個々のギャグについて語らざるを得ない。それは無粋というものでしょう。

 ところでチャウ・シンチーの映画って、なんでこんなに面白いんでしょうね。アクション映画全盛の香港映画界で、非アクション系の彼の映画が受けているのはなんでなんだろう。お話や演出の問題じゃなくて、これはやはりチャウ・シンチーというスター俳優の魅力なんでしょうね。彼の風貌は二枚目ふう。シリアスなドラマをやっていても不思議じゃない人が、突然バカバカしいことをやりはじめるところが、ミステリアスな魅力になっているのかなぁ。彼はどんな馬鹿なことをやっても不思議ではないのですが、どんな馬鹿なことをやっても、それに意外性があるのですね。間抜けなことをやっていても、力を抜いているわけじゃなくて、精一杯間抜けなことをやっているところがいい。馬鹿さの裏側に汗が光ってます。こうした一生懸命さが見えないと、「何かやると見せかけて何もやらない」というギャグも映えないしね。

 チャウ・シンチーの代表作『チャイニーズ・オデッセイ』を観ていないのですが、7月に大井武蔵野館で開催される香港映画特集にかかるようなので、今から楽しみにしてます。銀座テアトル西友でも次回『ミラクル・マスクマン』がかかるし、新作『食神』の公開も控えている。この夏は香港返還が話題になっていますが、個人的にはチャウ・シンチーに注目したいと思います。まだ彼の映画を観たことのない人は、これを期に注目してみてはどうでしょう。クセになることを保障します。


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