バウンド

1997/05/30 東宝第2試写室
ジーナ・ガーションとジェニファー・ティリーの女ふたりが主人公。
小品とは言え切れ味鋭いサスペンス映画。by K. Hattori



 真俯瞰のカットや印象的なクローズアップを多用したスタイリッシュな予告編を観て、一目で気に入り期待していた映画。本編も予告編に負けないスタイリッシュで洗練されたショットの連続。こんなにカッチョイイ映画を観たのは久しぶり。コーエン兄弟の『ミラーズ・クロッシング』を初めて観た時と同じぐらいの衝撃だ。映画を観た後、僕はしばらくニヤニヤ笑いが止まらなかったぞ。大袈裟じゃなく、本当に面白かったです。

 主演はジーナ・ガーションとジェニファー・ティリーの女ふたり。ギャングの情婦であるティリーと、その隣の部屋に住む泥棒コーキーが恋に落ち、緻密な計画のもとギャングの金200万ドルを盗み出す話です。ところがその後、物語が二転三転して、最後まで一瞬たりとも目の離せないサスペンスが続きます。ほとんどが室内劇なのですが、カメラの視点や人の出し入れが巧妙で、空間の狭さを逆手にとって、映画的な魅力あふれる映像に仕立てています。撮影はサム・ライミ映画の撮影も担当していたビル・ポープ。なかなか見せてくれます。

 ジーナ・ガーションは『ショーガール』にも出てましたが、今回の主役で僕にとって忘れ得ぬ女優となりました。とにかく、こんなにかっこいいヒロインには、ここ数年お目にかかってなかった。ジェニファー・ティリーとのレズ・セックス場面などもあって、ヌードが拝めるのも嬉しいです。レズ・セックスで思い出したんですが、この映画って話の骨格がアン・ヘッチ主演の『ワイルド・サイド』に似ているんです。『ワイルド・サイド』は娼婦がギャングの情婦と愛し合い、お金を持って逃げてしまう話でした。ジョエン・チェンがジェニファー・ティリーに代わり、クリストファー・ウォーケンがジョー・パントリアーノに代わると『バウンド』になる。『ワイルド・サイド』自体は僕から観るとすごく不満の残る映画でしたが、今回の『バウンド』はパーフェクト。

 男のお飾りみたいな身に甘んじているかに見えたジェニファー・ティリーが、隣室のガーションを誘惑するなど、かなり積極的に動きまわるところが、この映画を面白くしています。中心になるのはガーション演ずるコーキー、ティリー演ずるヴァイオレット、パントリアーノ扮するシーザーです。普通は主役と脇役がいると、脇役はそれと知らぬまま、自ら主人公たちの都合のよい状況を作り出すために動き回るものです。ところがこの映画は、三者がそれぞれ利己的に行動して、他人にまったく遠慮しない。シーザーが女たちの思惑をすべて裏切り、まったく予想もつかない行動をとりはじめるあたりは、きわめてスリリングな展開でした。

 サスペンス映画だけに、内容を最後まで書いてしまうことは避けますが、最後に見せる弾着シーンのスローモーション映像のユニークさと美しさは特筆もの。こういうショットを考えたというだけでも、この映画の作り手たちはすごい。監督・脚本はアンディとラリーのウォシャウスキー兄弟。これが監督デビュー作です。


ホームページ
ホームページへ