フィーリング・ミネソタ

1997/04/25 恵比寿ガーデンシネマ2
キアヌ・リーブスが兄貴の嫁さんを連れて駆け落ち。追いかける兄貴。
キャメロン・ディアスの表情が素敵です。by K. Hattori



 キャメロン・ディアスの魅力だけが印象に残る映画です。キアヌ・リーブスが主人公のはずなのに、なんだか彼はぱっとしません。リーブス演ずる弟がディアス演じる兄貴の嫁さんと駆け落ちして、それを兄貴が追いかけてくる映画です。これにギャングから盗んだ金や、汚職警官がからんできて、中盤は消えた死体のミステリー。内容は盛りだくさんで楽しいお話なのに、全体に起伏やメリハリがなくて、ぼんやりした映画になっています。とぼけた味のある脚本ですが、「とぼけた」と「ぼけた」とは1文字違いで大きな違いがある。この映画は、その小さくて大きな違いを踏み越えてしまっている。

 全体にテンポが悪いのです。この映画はドタバタコメディーにしなくちゃいけない。人の出し入れが多い脚本は、完全にドタバタを目指していると思うんですが、演出がそのスピード感を表現できていない。特に中盤の死体を巡るエピソードは、へんに間延びして感傷的な空気を漂わせてしまった。ここはもっとテンポアップして、湿った空気を感じさせない演出が必要だったと思う。ダン・エイクロイドも小悪党にすぎない役柄なのに、やけに粘着質で嫌らしい男になってしまいました。監督のスティーヴン・ベイグルマンは、この映画の脚本も書いている。自分で脚本を書いているのに、演出の段階で脚本の持ち味を壊してどうする!

 『マスク』ではギャングの情婦、『彼女は最高』では元コールガールに扮していたキャメロン・ディアスが、またまたギャングがらみのヒロインを演じています。前2作では受け身の役でしたが、今回は自分から積極的に人生を切り開いて行く女性。前から気になる女優でしたが、今回の役が今までのベストではないでしょうか。気の抜けた映画の中では、彼女の存在だけが唯一の救いです。彼女はあの厚ぼったい口元がなんとも言えずセクシーで、チャームポイントになっているんでしょうね。清楚で上品なお嬢様といった柄ではありませんが、意志の強そうな眼差しにドキリとさせられます。今のところ役柄の幅が限定されていますが、どこかで大ブレイクしそうな予感。ハーベイ・カイテルと共演する『真夏の出来事』も近日公開されますし、今後が楽しみな女優です。

 キアヌ・リーブスに恋女房を寝盗られた兄貴役、ビンセント・ドノフリオは見かけない顔ですが、なかなかいい味を出してました。ゴリラみたいないかつい容姿でありながら、気が小さくて純情な中年男。それがディアス恋しさのあまり逆上して、とんでもない行動をしはじめる可笑しさと悲しさ。車の中で唇をわなわな震わせながら「家を買った」と告白する彼の姿は、見ていてちょっと哀れですらあった。この人間味あふれる人物と対抗するにしては、キアヌ・リーブスはやっぱりぼんやりと影が薄いのです。ディアスもよかっただけに尚更です。

 最近大人気の黒人俳優、デロイ・リンドがギャングのボス役で登場。映画全体のアクセントになってます。ずっと丸坊主の印象があったので、長髪姿も新鮮です。


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