エコエコアザラクII

1996/05/04 シネマカリテ3
シリーズ第2弾。魔女・黒井ミサの誕生を描いた前作のプレストーリー。
低予算映画のしがらみを演出のセンスが救っている。by K. Hattori


 前作『エコエコアザラク』は主人公黒井ミサを演じた吉野公佳を、脇役であったはずの菅野美穂が完全に食った快作でしたが、この続編ではいよいよ吉野がひとりでがんばります。タイトルは続編風ですが、物語は普通の女子高校生であった黒井ミサがいかにして魔女になったかというお話で、当然ですが前作『エコエコアザラク』より時間的には前を扱っています。この物語を通じて、映画は完全に原作を離れて一人歩きしはじめたという感じ。映画版黒井ミサが暗いのは、彼女の生い立ちや過去に原因があったんですね。吉野公佳のキャラクターだとばかり思っていたら、そうじゃないようです。

 相変わらず低予算の映画なんですが、いろいろと工夫して観客をちゃんとそれなりに恐がらせる努力をしています。前作でも効果的に使われていたデジタルエフェクトも多用され、幻想的な魔法の世界を作り上げている。建物の中に結界をはる場面が何カ所か出てきますが、これもそれなりの雰囲気が出ていました。血糊などのアナログ手法もかなりセンスのいい使い方がされていて、銃弾で穴だらけになった警官が歩くたびに、ズボンのすそから血がばしゃばしゃ飛び散る描写なんかはかなりキています。大学の講堂でクモみたいに天上に張り付いている化け物にも驚いた。圧巻はクライマックスで巨大な魔物が登場する場面でしょうが、これなどハリウッド映画に負けない迫力だと思いました。

 これだけ工夫しているのに「なぜだ!」と叫びたくなるような場面がないでもない。その筆頭は黒井ミサが暮らすマンションの内装のチャチさ具合。ふすまや玄関の壁紙が、いかにも上から模造紙貼ってますというボコボコした状態なのには唖然としました。たぶん飛び散る血糊を避けるためだろうなと思っていたら、案の定その場所で血煙がもうもうと立ちこめることになる。撮影の後でふすまと壁紙を新しく張り替えたって、せいぜい数千円しかかからないんだから、もう少し何とかならないものか。

 魔女としての巨大なパワーを秘めた黒井ミサの身体を乗っ取ろうと、次々宿主を変えながら追ってくる化け物。肉体にダメージを負ってもすぐに別の健康な肉体に乗り移って追跡を続ける様子は、まるでターミネーターのように執拗です。そう、これは星の数ほどある『ターミネーター』型の追っかけ映画なのですね。となれば追われる側の男女の間に愛が芽生えるのも当然。普通はここからラブシーンになるのが一種のお約束なんだけど、キスしただけで黒井ミサが失神するとは可愛い限りです。

 映画としては小粒だけど、お話は定石をきちんと踏まえて水準はクリアしているし、演出もメリハリがあって思いのほか検討しています。この監督にはもう少し大きな予算で撮ってもらいたいな。


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