残酷異常虐待物語
元禄女系図

1996/05/04 大井武蔵野館
吉田輝男が案内役として登場する、江戸時代の虐げられた女たちの物語。
3話のオムニバスだが3話とも面白くない。by K. Hattori


 絢爛たる町人文化が花開いた元禄時代を舞台に、その裏側に潜む虐げられた女たちを見せ物趣味たっぷりに描いた3話からなるオムニバス。吉田輝男演ずる町医者の視線を狂言回し的にあしらっているのは、『明治大正昭和・猟奇女犯罪史』で同じく吉田演ずる検察医に物語を語らせたのと同じ手法。どっちが先でどっちが後だか知らないけど、要するに映画の構成としてはワンパターンなんだよね。ま、こうした映画はエログロが売りだから、お話なんてどうだっていいと言えばいいんだろうけど。

 この映画の問題点は、三つの話が三つともひどくつまらないということにつきる。第1話はやくざな男に騙されて女郎に身を落とし、それでも自分が騙されたことを知らないまま死んで行く女の悲劇。第2話は異常な体験から色情狂になった商家の娘と、彼女を慕い、救いたいと願いながら、ついには思いあまって彼女を殺してしまう奉公人の悲恋。第3話は残酷趣味の殿様に奥方が回りくどい復讐をし、最後は自分も殺されてしまう話。

 第1話はお話が古風で陳腐な分、それを吹き飛ばしてしまう下品さとエゲツナサが勝負だと思うのだが、見どころは遊郭の大広間で繰り広げられる褌一丁の女たちによる大騎馬戦と、カルセール麻紀扮する花魁が主人公の女を裸に剥くシーンぐらい。これがどちらも、いやにアッサリとしているのが残念でなりません。後者はキャスティングからして、もっと倒錯した魅力あふれる名場面になりそうなんだけどな。それより、遊里のシステムからして、同じ店の中で敵娼を替えることは御法度だったと思うんだけど、江戸後期や明治大正時代と元禄時代とでは、遊郭のしきたりが変わったのかなぁ。ま、時代考証なんてどうでもいいけどね。

 第2話はお話こそショッキングだけど描写が生ぬるい。火傷の男にさらわれた娘が激しくいたぶられる様子をもっと見せてほしいし、娘が男を殴り殺す場面はもっともっと血糊をたっぷり使ってほしい。娘と奉公人との関係も、あと一歩踏み込んで描いてほしかった。何も人間ドラマにしろなんて言っているわけではなくて、その方が倒錯した愛憎劇が馬鹿みたいに際立ってよかったと思うだけなんだけどね。

 第3話も物足りなさは同じ。面白かったのは最初に登場する、牛を使った残酷シーンぐらい。奥方が殿様の来ない寂しさを犬を使って慰める場面は、もっと濃厚なエロチシズムがほしい。金粉を使った拷問はアイディア賞ものだし、それをさらに鏡の間に閉じこめるのは天才と言うしかないんだけど、鏡の間に入れた後でカメラがフィックスしてしまうのは悲しい。あそこはもっとカメラをぐるぐる動かして、窒息しかけた奥方の焦燥感や、淫靡なサディズムの魅力をたっぷり見せつけてほしかった。


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