怒りの逃亡者
RAGE

1996/02/25 銀座シネパトス2
小学校の先生が政府の人体実験に巻き込まれて逃げ回るはめになる。
予算・スタッフ・お話は二流だがアクションは見せる。by K. Hattori


 長さの割には要素を詰め込みすぎだし、全体の構成バランスが無茶苦茶で、物語としてはデタラメもいいとこなんだけど、この無茶苦茶でデタラメなところが映画の欠点になっていないところがすごい。お話はアメリカ政府の秘密機関が薬物を使った究極の兵士作りを画策していて、その人体実験の材料として善良な小学校の先生が事件に巻き込まれるんだけど、彼は拳法の達人だから施設からまんまと脱走して、警官に追いかけられてカーチェイスになって、最後はマスコミに事実を発表して一躍ヒーローに……という、どこかの映画で観たことのあるようなエピソードの継ぎ合わせ。とりあえず誰かを引っ張ってきて改造人間にしてしまおうという発想は、ほとんど「サイボーグ009」か「仮面ライダー」か、なんだか石森章太郎のマンガだね。他にも『炎の少女チャーリー』とか『タイム・ボンバー』とか『ユニバーサル・ソルジャー』とか、とにかく引用もとがそもそもB級だから、亜流のこの映画はもっとB。

 出演している俳優もほとんど無名。主演の俳優は『ストリート・ファイター』に出演していたっていうんだけど、ほとんど印象に残っていない。周りの脇役たちも二流三流ばかりでしょうね。芝居の内容はともかく、顔ぶれに華がない。嘘みたいなミスキャスト(というより間に合わせのキャスティング)も目立つ。主人公を助ける記者なんて、どう見たら正義感の強い敏腕ジャーナリストになるんだろう。彼に惚れる女がいるってことが信じられない。ニヤッと笑うと、前歯にすき間が空いてるんだ。相棒の若い女性カメラマンもただのブス。

 無名の俳優たちが亜流のストーリーで映画を作ったらどうするか。ひたすら活劇をエスカレートさせるしかない。『SCORE』方式です。この映画が構成上のバランスを著しく欠いているのは、物語の薄さに比べてスタントシーンが極端に多くなっているから。でも、最初からそういう映画なんだから、それを欠点だなんて言う必要はない。だって、この映画のカーチェイスや高層ビル上でのヘリコプターとの追っかけなんて凄いじゃないの! カーチェイスでは、吹っ飛んだ自動車が地面に据え付けられているカメラにまともに突っ込んじゃうし、ビルの屋上に追いつめられた主人公は窓拭きのゴンドラからロープを伝って、ターザンが木から木に飛び移るみたいにヘリコプターに飛び移っちゃうんだもん。僕は思わず「うっそ〜」って叫びましたよ。

 こんなアクションシーンを見せてくれるなら、導入部がばたばたして話のつながりが見えにくくなるとか、主人公の人物造形に無理があるとか、そんなことはもう問題じゃないよ。スタントシーンで命綱がもろに見えてしまうチープな部分も含め、手作りのアクション映画風で僕は好きだけどね。


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