デスペラード

1996/02/01 有楽町スバル座
スティーブ・ブシェミが語り手になる導入部はかっこいいのだが、
その後はテンポの悪い演出のせいでダレダレにダレまくる。by K. Hattori


 ひたすらドンパチに終始するアクション映画だが、残念ながら予告編を超えるものは何も見いだせなかった。一番困ったのは肝心のアクションシーンに爽快感がないこと。スピード感もテンポもリズムもないアクションシーンには、最初の30秒で食傷した。銃撃戦は同じパタンの繰り返しが延々続くばかりで、何の工夫もない。こんなもの過去のアクション映画からいくらでもアイデアを流用できるだろうに、そうしたリサーチの努力を怠っているんじゃないのかね。幾たびも繰り返されるガンアクションにはこだわりや美学が感じられない。ギターケースがロケット砲になるのはおかしかったけど、これも只それだけのアイデアに終わっているんだな。面白さが続いて行かない。単なる思いつき。

 始めから終わりまで血みどろの銃撃戦が続くのだが、かろうじて見られるのは冒頭の酒場でスティーブ・ブシェミが語る主人公の活躍ぶりぐらい。ここはブシェミの語り口もあって、かなり見応えのあるシーンになっていると思う。でも、それもここで終わり。ここで骨太のアクション・ヒーローの登場を期待したのだが、実際にバンデラスが酒場に乗り込む場面以降は失望の連続だった。

 それにしても、なんだってこの監督は銃撃戦を全部スローモーションで撮ろうとするのかね。ペキンパーごっこもいいけれど、これで全編押し通されても退屈なんだ。なにより、体技としてのアクションは、動作をスローモーにしては迫力半減。アクション場面でスローモーション撮影をするのは、結構なセンスが必要なんだ。僕が見たところ、ロバート・ロドリゲスという監督にはそうしたセンスがないね。決めるべきところが決まらずに流れてしまうアクションの組立には、ほとほと幻滅させられた。

 そもそもお話自体がデタラメなんだよ。お話がデタラメでもアクションが面白けりゃ許されるのが娯楽映画だけど、アクション場面がご覧の通りの落第点だからお話のデタラメぶりが余計に目に付く。主人公は目の前で恋人を殺されてから復讐の鬼になるという設定だけど、ここはもう少しきちんと描いておかないとその後物語全体を引っ張るだけの力がないよ。あんな回想シーンだかイメージだけで観客を納得させようったって無理。付け狙う仇の正体がじつは……、というオチも強引だった。これは前半で「仇の名前はわかっているが、その顔も正体もわからない」という前提をしっかり描いていないからだ。きちんと押さえるところは押さえておいてほしい。

 映画の中で一番面白かったのは、コロンビアからの刺客が主人公を襲う場面。この手裏剣男がなんと言っても魅力的だ。こうしたキャラクターがもっと登場すると、話に厚みが出たのにね。残念。


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